酒を飲むことは罪悪である。酒を飲むと、地獄に落ちるらしいです。それなのに最近のナマグサ坊主ときたら酒をがぶがぶ飲みやがる。呆れる。せめて坊主くらいはさ、酒我慢しろよ、まじで。我慢できないの? だったら坊主なんかやめろよ最初から! 何なんだよ! 馬鹿じゃねーの! 金か? 金なのか? このクソ坊主が! 金の亡者が! 地獄に堕ちろクソ坊主! 賽銭箱ひっくり返して、金を勘定ようしまんなあ! 素敵ですよ。かわいいと言ってもいい。かわいらしい。あまりに欲望に忠実でね。で、その金どうすんの? ベンツとか買っちゃうわけなの? 素敵! 私、おベンツ乗り回すボウズだなんて憧れちゃう!


 で、クソ坊主があまりににくらしいから、僕は吐いてやった。叔父の通夜で、吐いてやったんだ。すごい勢いでどんどん酒が、際限なく出されるからどんどん飲んじゃった。叔父さんの通夜なのに。そして吐いちゃった。ゲロゲロって吐いちゃった。トイレだけどね、トイレで良かったけどもね。叔父さんが死んで、親族みんな悲しみを押し殺してのんでるのに、僕はただ、酒じゃ酒じゃうひゃひゃは、なんて言ってどんどん飲んじゃった。哀しいって気持ちは、酒のおかげでめちゃくちゃになってしまって、わけがわからなくなった。叔父さんを悼むっていう気持ちがうやむやになった。これは罪です。罪だ。地獄へ堕ちるべきだ。ナマグサ坊主なんかより罪が重い。通夜で吐いた。人格疑われます。哀しくて悲しくて、やりきれなくて呑むしかなくて、とかいうのじゃないもの。ただ、酒じゃ酒じゃ、って言って飲んだんだもの。どうしようもないクソ人間だ。殺したい。


 酒を呑む人間は、よくない人間です。僕は酒を呑みます。だから、よくない人間です。自分が素面のとき、酔っ払いを見ると吐き気がしませんか? 僕は本気で殴り殺してやろうかと思うくらい、にくいです。酔っ払いが。ふらふらフラフラしやがって、妙に馴れ馴れしく、怖いもの知らずみたいな風情で、われを失ってる感じ、道端で歌でも歌い出したら手が付けられない。ひどいものである。


 煙草も大分タチが悪いが、酔っ払いほどではない。何しろ酔っ払いはキチガイだ。常識が通用しない。理性がないのだ。恐ろしい。こんなものが、世の中をめちゃめちゃにするものが合法だなんて、人間はすさんでいるね。呆れますよ。酒呑みは差別されるべき人種だ。危険すぎる。隔離されるべきだ。とりわけ子供に酒をすすめる大人、あれは見ていられない。恥ずかしい。「泡だけでもどうだ?」なんて、いやらしい顔して言うんだ。みっともない。人類の恥である。それにつきあわされる子供が可哀想でならない。ビールの泡だけ、ズルズルと吸い込んでいる子供、あれは見たくない絵です。やりきれない気持ちになる。子供が、ちょっと大人への一歩、禁断の果実にふれちゃった、みたいなうわついたあの感じ、とてもやりきれない。逃げ出したくなる。


 酒を呑まない人は素敵だ。謙虚で、なんだか微笑ましい。さらさらしてる。純潔だ。かがやいている。常に正しく自分を律することができる人間だ。僕の理想とするところです。僕は生まれ変わったら、酒を呑まない人間になりたい。さらさらした人になりたい。何につけても、さらさらした人に。