カラオケキング


 それからM君と別れて3人でカラオケキングに行った。朝まで飲み放題の歌い放題ヒャッホウ! Tさんはのびのびと幸せそうに歌った。D君はさわやかに甘く歌った。僕はナルシスティックに気色悪く歌った。歌っていたら、吐き気は急速におさまった。オナニーしたあとに性欲がおさまるみたいに急速に。そして僕はカラオケキングオリジナルサワー5種類をメニューの上から順々に飲んでいくことにした。


 まず「王様の微笑」。あまり笑えない味がした。次に「夢物語」。夢というけど、これは悪夢のような味がした。そして「初恋物語」。これはピンク色をしていた。とても不自然なピンク色だった。梨華ちゃんが好きそうなどぎついピンクだった。初恋って、もっと淡い色なんじゃないのか? 味については、あんまり初恋の味はしなかった。苦くもなかったし甘くもなかった。だけど実際のところ初恋ってそんなものなのかもしれないな、なんて思った。僕の初恋も、特に苦くないし甘くなかったような気がする。とにかくそのサワーは味があるんだかないんだかわからない意味不明の味がした。初恋ってあれだ、意味不明ってことだ。そういうことが言いたいんだ、カラオケキングはきっと。


 結局、5種類のサワーのうち、初恋物語までしか飲めなかった。酔ってはなかったけど、どれも不味すぎたためにハイペースでは飲めなかった。残っていたのは、「元禄物語」と「熱愛物語」。元禄。意味がわからない。どんな物語だ? 熱愛物語。どんな色なんだろう? 真っ赤かな。僕は熱愛まではたどりつかなかった。どうせ僕はいつだって方想いだよ。梨華ちゃんはいったいどんな熱愛をするんだろう。想像するだけで苦しくなる。相手は絶対に僕じゃないんだ


 そして帰ることになった。朝5時だった。カラオケ代はTさんが多めに出してくれた。僕は年長者なのにおごってもらっちゃった。申し訳ないです。


 思い返してみると、Tさんはとてもチャーミングだった。あらゆる仕草や言動が魅力的だった。変な意味じゃなく。D君はとてもクールだった。でも優しさが感じられるクールさだった。M君は何か知的で繊細な雰囲気があった。そして僕はただの酔っ払いだった。そしてシモネタしか理解できない人だった。本当にごめんなさい。みんな進級おめでとう。そして僕もおめでとう。6年生おめでとう。