お買い物


 午後6時ごろ、今日が3月1日だということに気付いた。美勇伝の新曲のフラゲ日じゃないか。そうだ、2月は28日までしかないんだ。
 サティに行って、CD売り場に向かった。途中、ホワイトデーのコーナーがあった。メルヘンチックなコーナーだった。キティちゃんやらスヌーピーやらなんやら、かわいい感じのぬいぐるみがたくさん置いてあった。僕は手のひらサイズのドラえもんが付属したお菓子袋に目を留めた。これがいい。これをあげよう。梨華ちゃんに。きっと喜ぶ。でも良く考えたら僕は梨華ちゃんからチョコレートをもらってなかった。僕にとってホワイトデーはなんの意味も持たない日だった。
 ホワイトデーって男が女に告白してもいいのかな。どうなんだろう。というか、なんで女ばっかり告白の為の日が用意されているんだ? 不公平じゃないのか。僕だって梨華ちゃんに告白したい。例えばこんなふうに。


「このドラえもんを僕だと思ってください。ドラえもんが何の留保も条件もなしにのび太君を助けるのと同じように、ドラと化した僕は全くの無償で梨華ちゃんを助けます。悪い人に襲われてピンチに陥ったら、空気砲で吹き飛ばしてやります。空を飛びたくなったらタケコプターを取り出します。アイドルが嫌になって突然ブラジルあたりに逃避行したくなっても、大丈夫です。どこでもドアがあります。なんでもできるんです。叶わないことはないんです。決して不幸にはなりません。僕がいるかぎり。不幸になんてさせない。もし好きな人ができて、その人が振り向いてくれなかったら、あいあいパラソルを取り出します。もしくはキューピッドの矢を取り出します。梨華ちゃんは好きな人と結ばれて、幸せになる。
 そしてできれば結婚式の前日に、僕を燃やしてください。躊躇なく燃やしてください。感謝の言葉もなにもいりません。完全に灰になるまで燃やしてください。もし僕を燃やして捨てないと、大変なことになるかもしれません。僕の中の邪悪な心が、目覚めてしまうかもしれない。結婚式の当日に世界を終わらせてしまうかもしれない。僕のポッケの中には、素敵なものばかり詰まっているわけではないのです。地球破壊爆弾という恐ろしい秘密道具があるのです。僕は梨華ちゃんの幸福を願ってはいるんですが、同時に自分の幸せをも願っているのです。それはエゴに満ちた幸せです。だから、僕の恐ろしいエゴが爆発して世界を終わらせてしまわぬうちに、僕を燃やしてください。お願いします。梨華ちゃん梨華ちゃん。好きです。誰よりもあなたのことが」