ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

『グランド・リカニー』

進行役(以下S)「とりあえず、ふっち君さん、『グランド・リカニー』で芥川賞受賞ということで、おめでとうございます」
ふっち(以下ふ)「どうもありがとうございます。まさか僕が受賞できるとは思ってもいませんでした」
S「ふっち君さんが石川梨華さんの大ファンだということで、今回、対談の場を設けさせて頂きました」
ふ「なんというか、嬉し恥ずかし恋せよ乙女ですね。でも、いいのかしら」
S「いいんですよ。石川さんも是非お会いしたいということでしたので」
ふ「そうですか。僕に会いたいと。ほんとですか。渋々来るんじゃないですか? だいたい梨華ちゃんは、石川さんはどこにいるんですか。見当たりませんよ。まさかあなたが梨華ちゃん、石川さんだと言うんじゃないでしょうね」
S「馬鹿言っちゃいけません。私は男ですよ。石川さんのわけない。見ればわかるでしょうに。石川さんは、もうすぐここにいらっしゃいます。すぐ来ます」
ふ「ほんとに来るんですか。なんだか、恥ずかしくなってきたな。ごめんなさい、ちょっとトイレ行ってきます。緊張して、おしっこしたくなってきました」
S「何言ってるんですか、駄目ですよ。もう、来られますから。今、来ます。我慢してください」
ふ「駄目です、我慢できません。ここまで出かかってるんです。梨華ちゃん、石川さんの前で小便をもらすわけにはいきません」
S「あなたは、そんなこと言って、逃げる気じゃないでしょうね。そうはさせませんよ。逃げられたら、私の首が飛んでしまいますよ。それと、なんですか、その梨華ちゃん、石川さん、というのは。どうして言い直すんですか。どういうつもりですか。梨華ちゃんなら梨華ちゃんで構わないですから、どちらか一つに決めて頂けませんか。聞いていてイライラしてくるんですよ」
ふ「これはすいません。梨華ちゃん、石川さんに対して、どう呼びかければいいのか迷っているわけなんです。だんだん、一つに統一していくつもりではいます。そのくらい我慢してもらえませんか。」
S「じゃあ、私が決めますよ、梨華ちゃんに統一してください」
ふ「なんであなたが決めるんですか。梨華ちゃん、石川さんのことをどう呼ぼうが僕の勝手じゃないですか」
S「そんなに興奮しないでくださいよ。わかりましたよ。我慢しますよ。そのかわり、あなたの方でも小便に行くのを我慢してくださいね」
ふ「わかりましたよ。しょうがない。それで、梨華ちゃんはいつになったらここに来るんですか」
S「あ、統一しましたね。いい心がけだ。石川さんは、もうすぐ、あ、来ました、いらっしゃいましたよ、ほら」
ふ「え、来たんですか、どこですか」
S「石川さん、いらっしゃいませ。お忙しいところわざわざすいません」
ふ「どこですか、梨華ちゃんはどこですか」
石川梨華(以下梨)「こんにちは、初めまして」
ふ「どこですか、梨華ちゃんはどこですか」
S「あなたの後ろですよ、後ろ」
ふ「あ! 梨華ちゃん! 石川さん? こここここんこん」
梨「こんにちは、初めまして、石川梨華です。よろしくお願いします」
S「石川さん、どうぞおかけください。そうです、ふっち君さんの正面の椅子に」
ふ「すいません、ちょっと、失礼します」
S「ちょっと待ってくださいよ! どこ行くんですか」
ふ「トイレですよ、漏れそうなんですよ」
S「怖気づいたんですね、逃げる気でしょう、駄目ですよ、それともなんですか、リカニーでもするつもりですか。テント張ってますよ、何考えてるんですか。何が『グランド・リカニー』だ、ふざけてる」
ふ「何いってるんですか、やめてください、僕を侮辱するな。リカニーなんてするわけないだろう。おしっこをするだけだ。馬鹿にするな」
S「あなたが逃げようとするからいけないんです。恥ずかしいのはわかる、でも逃げちゃいけない。色んな人に迷惑がかかる。石川さんだって困りますよ。ほら、困った顔をしている」
梨「あの、よくわからないんですけど、トイレ行きたいなら我慢しないでいいですよ」
ふ「梨華ちゃん梨華ちゃん、え? あなたは本当に梨華ちゃんですか」
梨「そうですよ(笑)」
S「あたりまえでしょう。何を錯乱しているんですか。とにかく座ってください。トイレは後にしてください」
ふ「錯乱なんてしてません。僕は冷静です。わかりました。おしっこもしたくなくなりました。座りますよ。それで、何を話したらいいんですか」
S「あなたの好きなように話していただければいいです」
ふ「なんですか君は、進行役でしょうが。仕事をしてください。そんなこと言われても困る」
S「あなたは石川さんのファンなんでしょうが。話したいことはたくさんあるはずです」
ふ「あるけど、あるけど・・・」
S「大の大人が今さらなにを恥ずかしがっているんですか、みっともないですよ。ほら、石川さんだってあざ笑っている」
ふ「大の大人とか言わないでくださいよ。梨華ちゃんが居たたまれなくなるじゃないですか」
S「あ、これはすいません。石川さん、ごめんなさい」
梨「いや、いいんです。あの件に関しては、今は反省しています」
ふ「ああ、梨華ちゃんが悲しい顔をしてしまった。どうしてくれるんですか。梨華ちゃんはいいんだ、反省すべきはこのクソ馬鹿進行役なんだ」
S「クソ馬鹿とはなんです。ひどい言いようだ。でもまあ、いいですよ、僕は怒りません。大の大人ですからね。あなたと違って」
ふ「てめえ、また言いやがったな!」
S「てめえとは何だ貴様!」
梨「あの、ちょっと、やめてください・・・。落ち着いてください。とにかく、対談を進めましょうよ」
S「あ、石川さん、すいません、申し訳ありません。取り乱しました」
ふ「梨華ちゃん、ごめんなさい。落ち着きます」
S「なんで私に向かって言うんですか。あなたはさっきからずっと私の方ばかり見ていますね。石川さんとの対談ですよ。石川さんの顔を見て話してください」
ふ「え、だって・・・」
梨「そうですよ、ふっち君さん、わたしの顔を見てください」
ふ「梨華ちゃん・・・石川さん・・・あの、どっちがいいですかね、呼び方」
梨「どっちでもいいですよ(笑)。呼びやすい方で」
ふ「じゃあ、梨華ちゃんで、いいですか」
梨「どうぞ(笑)」
ふ「あの、あと、僕のことはふっち君と呼んでください、できれば」
梨「え・・・でも、年上だし、初対面だし、それはちょっと」
ふ「いいんです。そう呼んで欲しいんです」
梨「わかりました。ふっち君。なんだか照れちゃいますね(笑)」
ふ「うわあ、感激! おい進行役、梨華ちゃんがふっち君て呼んでくれましたよ。そして照れていますよ。ここは夢の国ですか。素敵すぎやしませんか」
S「夢の国ではありません。ここは高田馬場のビルの一室です。そしてあなたの目の前には石川梨華さんがいます。あなたが芥川賞を受賞したから会えたんです」
ふ「そうでした、そうでした。現実なんですね。驚きだ。本当に嬉しい。梨華ちゃん、僕の小説、『グランド・リカニー』は読んでくれましたか」
梨「あの、申し訳ないんですけど、まだ読んでません・・・」
ふ「あ、そうなんですか、今日、本を持ってきたので、あげます。読んでください。梨華ちゃんのことが書いてあるんですよ」
梨「わたしのことが? それは嬉しいです! そういえば、タイトルもリカニーって書いてありますね。このリカっていうのは、わたしのことなんですか?」
ふ「そうです、そうなんです、まさに梨華ちゃんのことなんですよ」
梨「ところであの、ニーってなんですか? リカニーってどういう意味なんですか?」
ふ「読めばわかるんですけど、それはですね、」
S「ちょっと、やめたほうがいいですよ、説明するんですか?」
ふ「しますよ。これは芸術作品なんだ。芥川賞なんだ。恥ずかしいものじゃないんだ」
S「あなた、嫌われますよ、石川さんに。いいんですか?」
ふ「え? そんなことないですよ。ねえ、梨華ちゃん、僕のこと嫌ったりしませんよね」
梨「はい、大丈夫ですよ。よかったら教えてください」
ふ「オナニーっていうことです。わかりますよね、もう20歳なんだから。それで、梨華ちゃんでするオナニーが、リカニーとなるわけです。そういう意味なんです。『グランド・リカニー』」
梨「・・・そうなんですか。オナニー・・・。わたしでする・・・?」
ふ「何をかくそう、僕は毎日梨華ちゃんでオナニーしているんですよ。好きですから、梨華ちゃんのことが。まあ、リカニーですね。気持ちいいんですよ。愛のあるオナニーってやつでしょうか。『グランド・リカニー』は、要するにそういう小説です」
S「ちょっと、そのへんにしてください。あなたそれ、セクハラですよ。こんな話、本に載せられませんよ。あ、なんですか、マネージャーさん、あ、すいません、え? 次の予定がある? 石川さんが? ケツかっちん? もうですか? まだ時間はあるはずですが。急な予定が入った? ちょっと待ってください、え、帰る? 今すぐ? 石川さん、待ってください、行かないでください」
梨「あの、すいません、予定があるので、今日はこのへんで失礼します・・・」
ふ「梨華ちゃん、帰っちゃうの? 待ってください、まだ話があるんです。大事な話です。お願いです。わかりました。もうリカニーの話はしません。セクハラのつもりはなかったんだけど、結果的にそうなってしまったみたいです。反省しています。だから行かないでください」
梨「本当に、すいません、じゃあ、さようなら」
ふ「・・・わかりました。しょうがないですね。あの、最後に一つだけお願いがあります。携帯の番号を教えてください」
梨「あの、申し訳ないんですけど、そういうのはちょっと・・・」
ふ「なんでですか? 芥川賞作家ですよ僕は。芸術家なんだ。言っちゃ悪いけど、梨華ちゃんより格上なんだ。大先生なんだ。名誉もあるし、金もある。その僕がお願いしているんだ。むしろ梨華ちゃんが訊いてくるべきところなのに、僕が訊いているんだ。どうして教えてくれないんですか。いたずら電話もしないし、他の誰にも教えない。だいじょうぶだよ。ねえ、だから」
S「みっともない真似しないでください。なんで土下座をしているんですか。何があなたをそうさせるんですか。やめてください」
梨「すいません、時間がないので・・・帰ります」
ふ「梨華ちゃん! 待って! どうして! 好きなんだ! 愛している! そしてこんなに激しく土下座したことはいまだかつてないんだ! ねえ! 梨華ちゃん! 結婚してください! なんでもします。奴隷にだってなります。僕の口を便器のかわりにしてもいい。僕は梨華ちゃんの排泄物を養分として生きていく。梨華ちゃん! 好きだ!」
S「・・・ふっち君さん、もう、石川さんはいませんよ。帰ってしまいました。残念ですね。おそらくもう二度とあなたには会ってくれませんよ。かわいそうに。せっかく芥川賞をとったのに。なんにもなりませんでしたね。同情しますよ」
ふ「梨華ちゃん・・・畜生! そういうことか。わかってはいたが。僕がどんなに立派になっても梨華ちゃんは振り向いてくれないんだな。僕はどうしたらいいんですか。進行役の人、僕はどうしたらいいんですか」
S「知りませんよ、そんなの。自分で考えてくださいよ。あーあ、参ったな、これじゃ記事にならないよ。結局何も話していないんだもの。リカニー以外にはさ。馬鹿みたいだ」
ふ「ほんと、馬鹿みたいだ。笑えるね」
S「ほんと、わらえますね。まあ、ちっとも楽しくはなくて、失笑、嘲笑なんだけどね。ひどいもんだ」
ふ「大の大人が馬鹿っぽい」
S「そう、それ。大の大人が馬鹿っぽい。名言だな。非常に文学的だよ。芥川賞ものだ」