家出


 家族と顔をあわせたくなかったので、夕方から家出をしました。自転車に乗って町内を一周したのです。お腹が減ってきたなあと思ったら、ラーメン店が見えました。看板には、「びっくりラーメン」と、びっくりするくらいでかい文字で書いてありました。一杯180円とのことで、家出少年の僕にとっては魅力的な安さでした。今後の放浪生活のことを考えれば、できるだけ出費は抑えなければならないのです。
 店内は安っぽい蛍光灯の光で満たされており、客はまったくいませんでした。貧乏丸出しの家族を除いては。そのファミリーの子供は、パジャマみたいなピンク色の服を着ていました。生地も安ければ色も安い感じでした。生地が安いのはまあわかる。でも色にも安い色というのがあるものかと、少し驚きました。さすがびっくりラーメン。その子はガラガラなのをいい事に、奇声を発しながら走り回っていました。女の子でした。あまりかわいくはありませんでした。
 かわいくない幼女を見るとなんだか切なくなります。自分がかわいくないということに気付いてない様子で無邪気に笑っているところをみると、さらに切なくなります。でもまだわからない、と僕は思いました。梨華ちゃんだって子供のころはちょっとアレだった。あの子だって、梨華ちゃんみたいに、おかちめんこから世界一の美女へと変身を遂げるかもしれない。可能性は1%にも満たないだろうけど。
 僕はその子が将来白鳥になることを祈りながら、びっくりラーメンを食べました。まさにびっくりするようなお味でした。おうど色のもやもやしたものが口に広がっていくような感じでした。麺にコシはありました。しこしこしていました。でも単にゆで方が足りないだけのように感じられました。スープは、あっさりしていました。でも単に色々な手抜きを重ねた結果、味が薄くなっただけのように思われました。もやしは、カップラーメンに入っているような不健康なもやしでした。袋から取り出してそのまま載せられたみたいにひとかたまりになっていました。
 おいしくはなかったけれど、びっくり体験を楽しむために、週一くらいで通おうと思いました。