泥が出てくる


 朝起きると、頭の中に泥がつまっているようだった。ぬるぬるしてる。最近、つねに何かに怯えているため、深く眠ることができない。泥がたまるのは、そのせいかもしれない。けれど、本当はきっと別の理由だ。それは漠然としてわからないのだが。とにかく今日は、昨日よりも泥が増えたみたいだ。そのうち、体じゅうの穴という穴から泥が流れ出てくるんじゃないかという気がする。泥だけに、どろどろという音を立てて出るに違いない。体をはったダジャレと言える。僕は、いろんな穴から、どろどろと泥を垂れ流し、「泥だけに、どろどろ出るんだよ、面白くないですか?」と半笑いで言いながら街中を闊歩するのだ。


「ほら、有権者のみなさん、どろですよ、どろ。汚い、なんていわずに、このどろを見てください。どろの発する音を聞いてください。あなたの頭の中にも、きっと泥がある。いつかはあなたも泥がめいっぱいたまり、しまいにはこのようにあふれだすんです。僕は人間です。泥を出す。あなたも人間です。泥を出す。僕と同じなんです。息をするのと同じです。血が流れるのと似たようなものです。泥は生きているかぎり、みんなの頭ン中にたまっていくのです。そうしていつか目や鼻から出てきます。いろんな穴から出ます。でも、怖がる必要はないんです。みんな一人残らず経験することです。みんな、泥を垂れ流すことなしに生きてはいけないのです。そしてこれはそんなに不愉快なことではありません。むしろ愉快です。慣れると痛快なんです。なにしろ、完璧なダジャレが言えるのですから。心技体、すべてそろったダジャレです。泥をどろどろ出して、みんな大笑いです。ほら、面白くないですか? どろどろだよ」