検便


 今日はバイト休みだったけど、検便のうんこだけ提出しに行った。自分のうんこ採取するのにすごく抵抗があって、先のばしにしていた。今日は休みだけど、今日しめきりだから行かないわけにはいかなかった。


 肛門の下に手を回して、うんこ的なものをキャッチする。見てみたら、ころころしてて可愛いものだった。でもそれはうんこ以外の何ものでもなかった。僕はある種のアイドルだし、梨華ちゃんと同じようにうんこしないものだと思ってた。いままで排出してたのは、うんこ的な何かであって、うんこであるわけはないと思っていた。でも、そのとき僕の手の中にあったのは、皮肉なことに、理想的といっていいくらいの完璧なうんこだった。硬すぎもせず、柔らかすぎもしない。黒すぎず、白すぎない。そして適度な悪臭を放っている。世界生き物うんこ大図鑑の「人間のうんこ」のページに載っていてもおかしくないくらいのうんこであり、ウンコだった。僕は自分の中から出てきた紛れもないうんこを見て、大きなショックを受けた。まさか僕が、うんこをするなんて。ということは不可避的に、梨華ちゃんもうんこをするってことじゃないか。とてもじゃないけど受け入れることができない。梨華ちゃんはセックスするはずないのと同じくらいうんこなんてするはずないんだし、しちゃいけない。アイドルなんだから。だけどある種のアイドルである僕がうんこする以上、同じ土俵にいる梨華ちゃんがしないわけがない。なんていうことだ。信じられない。信じたくない。でも僕はそれを受け入れなくちゃならない。梨華ちゃんもうんこをするってことを。そしてそのうんこごと梨華ちゃんを愛さなくちゃいけない。というかむしろ、梨華ちゃんのうんここそを重点的にやさしく愛さなくちゃいけない。絶品のトリュフを食べるみたいにして満面の笑みで食べなくちゃならない。食うんだ。食え。食って死ぬんだ。それが一番美しい死に方だ。


 でも僕は自分のうんこは食べなかった。梨華ちゃんのうんこじゃないし。ちょっとだけ採取して、検便用の容器に入れて、残りは流した。