ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

31日


 あれから4時間くらい眠って、起きる。あんまり寝た気がしない。ラジオをつけると布袋さんの声が聴こえた。じつに穏やかな声だった。きっと人生がすごく充実してるんだろう。布袋さんはモンテローザに行かなくていいんだから羨ましい。僕はこれから、大晦日だってのにモンテに行って12時間労働。身体と心をすり減らしに行く。大根おろしみたいに、グズグズになって帰ってくるんだ。
 景気づけにサンボマスターの『これで自由になったのだ』を聴いて、これで自由になったのだ! と叫んでみたけど、ぜんぜんむなしかった。僕はこれっぽっちも自由なんかじゃない。奴隷なんだ。気の弱い僕は、人に逆らうことができない。ひょっとしたら僕はこのまま超ド級ブラック、かつ超ドキュン企業のモンテに不可避的に就職するんじゃないかという気がする。なんや人相の悪い幹部の人が僕を午前2時45分ごろに唐突に呼び出し、「しょうがない、お前は奴隷みたいに働いてくれるし、社員にしてやるか」みたいなことを言うんじゃないかなあ。そして僕は条件反射的に言う、「ありがとうございます! 僕は誰にも負けない立派な奴隷になります!」
 いやな妄想をした。これが妄想で終わってくれればいいんだけど。


 それを振り払うかのように、僕は梨華ちゃんがいってらっしゃいのキスをしてくれるという素敵な妄想をし、そしてじっさいにポスターにキスをして、家を出た。


 店につくとなんや幹部の人たちがいっぱいいた。バイトの人はほとんど休んでいて、その穴埋めに来たらしかった。9割がた精神的に壊れてるっぽい感じがした。無駄に元気がいい。ほとんどヤケクソなんじゃないかと思うくらい。係長と呼ばれてる人が言う、「田中君、元気ないねええええ!」笑わせんな、元気なんて出るわけないだろクソッタレが。死ねよ。お前は新年を迎える前に元気良く死ね。その人は、実にささいなことで目をつり上げて怒った。人間なら当然犯すようなうっかりミスにさえ、きつく怒鳴りつけた。怒りに転化するような元気なら、最初から必要ないだろう、って思わずにはいられなかった。幹部連中は、仕事中ガンガン煙草を吸って、知性が塵ほども窺えないバカ話を隙あらばした。そのくせ、僕やもう一人のバイトには、いっさい煙草をすすめなかった。僕とY君は、DQN幹部におびえ、ニコチンの欠乏に苦しみながら黙々と仕事をした。休憩は、もちろんのこと一分一秒も貰えなかった。労働基準法の存在を、彼らは知らないらしい。知ってて無視してるんなら、余計タチが悪い。なんなんだ一体。マジで奴隷みたいだ。最後に一言くらい、「今日はお疲れさま、ありがとう、助かったよ」的な言葉があるのかと思ってたけど、それもなかった。あの人たちは、モンテの幹部というよりはむしろ患部なんじゃないかと思う。