長老宅1日目

 3月3日、ark君とリトルチンの卒業が決まったというので、長老さんの家でお祝いをした。僕は暇だったのでお祝いに駆けつけた。だけどお祝いという割りには祝賀的メッセージはあまり聞かれなかった。みんな目の色を変えて酒をむさぼり飲んでいた。心の底から二人を祝っていたのは僕だけだったんじゃないかな。僕以外の人々は多かれ少なかれアル中だった。とりわけアル中っぽかったのは、とほ君だった。そのとほりんは恐ろしいほどのペースで酒を飲み、かなりわんぱくにふるまった。少年ならわんぱくでも許されるけど、大の大人がわんぱくというのはいかがなものか。ロリコン的発言を際限なく繰り返した後、とほりんは忽然と姿をけした。いなくなった。探してみると、トイレにこもっていることが判明した。1時間以上もトイレにひきこもり、我々は非常な迷惑をこうむった。トイレットにいけない。好きなときにいつでも排泄できるということは、何にもかえがたい幸福なのだということに、25年生きてきて初めて気が付いた。いまやその幸福は、とほりん一人が独占していた。しかしながら許しがたいことに、なんとも贅沢きわまりないことに、トイレから出てきたとほDQN君は非常に不幸そうな顔をしていた。からだじゅうゲロまみれになっていた。そして当然トイレもゲロまみれになっていた。そこで僕はトイレのゲロを掃除するはめになった。でも僕はそんなに嫌な気持ちにはならなかった。むしろ自ら進んでやった。ぱぴよん女史や、ちぱりん女史の手前、いいカッコをしたかったのである。ポイントをかせぎたかったのである。案の定、僕のイメージはぐーんとアップしたらしく、ぱぴよんちゃんは僕をうるうるとした瞳で見つめた。僕は計らずもとほりんのゲロりんによってあこがれの勇者的な地位を得たのである。とほりんのわんぱくに感謝しなけりゃならない。ありがとう。でも僕はけっして調子にはのらない。なんの、これしきのこと。ゲロくらいで騒がないでいただきたい。僕は当然のことをしたまでです。僕のことはいいんだ。とほりんをいたわってあげてください。というような感じで、クールに酒をあおった。これによって僕はさらにポイントをかせぐことができた。

 それからまたとほりんが復活して、自分のマリオ動画を見せびらかして詳細な解説を始めた。これは実に神技だった。でも全体的な印象として、何もかもがキモかった。マリオの動きすらキモく見えた。とほりんは何とも言いがたいキモさをその場に残したまま、無責任にも別室に消え、すやすやと眠った。じつにロックな人だと思った。ロリコンだし。

 ぱぴよんちゃんとちばりんがお風呂に入り、しばらくして二人は眠った。僕はその辺にほっぽってあったバスタオルを、特に悪気もなく拾って、それを握りしめて床に入った。そして特に悪気もなくそれの匂いをかいでいたら、だんだんとぱぴよんちゃんのことが愛しくなってきた。名前を何度もつぶやいていたら、どんどん気持ちがたかまっていった。僕はぱぴよんちゃんのことが好きなのかもしれない。もしかしたら。ちなみに、この呟きが隣の部屋の女史二人に聞こえていたかもしれないことが、のちにわかった。部屋を仕切っていたのは、壁ではなくカーテンだったのだ。僕はそれに気付かなかった。「ぱぴりん、好きだよ」という僕の呟きは、完璧に筒抜けだった。