広末涼子

 スマステーションを見ていたら、広末が出ていた。なんだかすごく可愛くて参ってしまった。壁に貼られた梨華ちゃんの視線が気になって、「違うよ、僕の好きなのは梨華ちゃんだけだよ」と言いながらも、しばらく広末の素敵な笑顔を眺めていた。そしたら急に広末のライブビデオが見たくなってきたので、押しいれの奥から探し出してそれをビデオデッキに挿入した。武道館での初ライブの模様が収められている。最初に会場前のヲタの姿が映し出される。ヲタがドアップでなにやら意味不明のことをしゃべる。やばい。とんでもないぞ。きめえ。ハンパないきめえ。モーヲタと同じくらいきめえ。このビデオを編集したやつは性格が悪いなあ。きもい人だけを選んで繋げるなんてひどい。でも、もしかしたら、この会場にはきもくない人は一人もいなかったのかもしれないな。だったらしょうがないよな。まあそうだろうな。それが事実だろうな。モーヲタだって一人残らずきもいものな。僕ははっきり言って、きもくないモーヲタってひとりも見たことないや。みんなきめえ。言うまでもなく僕もきめえんだけど。

 そして広末が出てくる。かわいい。歌声もキュートだ。少し鼻にかかった丸っこい声。18歳の広末。僕はそのころ、受験勉強をしていた。勉強が一段落すると、このビデオを観た。涼子ちゃんの笑顔を見ていると元気が出た。すごく励まされた。幸せな気持ちになった。僕はそのころ、涼子ちゃんに恋をしていたんだ。その時の気持ちがだんだん蘇ってきて、なんだかタイムスリップしたような気持ちになった。涼子ちゃん。好きだよ。君のいる大学に行きたい。早稲田大学に。ふと梨華ちゃんのことを思い出す。梨華ちゃん、違うんだよ、べつに浮気をしているわけじゃないんだ。ただ郷愁に誘われているだけ。今好きなのは、梨華ちゃんだけだよ。

 ウイスキーを飲みながら、一通りノスタルジアを味わったあと、生命の輪郭が歪んでくるような切なさがこみあげてきた。僕はいつかこれと同じ事を繰り返すんだろうか? 梨華ちゃんの笑顔を見ていると元気が出た。すごく励まされた。幸せな気持ちになった。僕はそのころ、梨華ちゃんに恋をしていたんだ。恋をしていたんだ。恋をしていたんだ。