外人さんいらっしゃい

 トムとマイケルが、とうとうやってきた。ママとパパが、へんな、大げさな口調で話している。パパが僕を指差して、「ディス、えーと、マイサン。ディスイズ、マイサン。サード、マイサン」と言った。舞さん? 4番サード舞さん? 僕はとりあえず、英語を話したら負けのような気がしていたので、日本語で「こんにちは」と言った。そうしたら、トムだかマイケルだか知らないが、「コンニチハ」と言った。なんだか僕は、侮辱されたような気分になった。そしてトムとマイケルは、うちのパパとママに連れられ、回転寿司を食いに行った。僕も誘われたけど、行かなかった。それで、家にひとりで残って、梨華ちゃんの写真をなでたり、写真にキスしたり、写真にプロポーズしたりしていた。

 トムとマイケルが帰ってきて、パパとママと何かいろいろやったのち、僕の部屋に乗り込んできた。パパが、「ゲームやらせてあげて」と言う。それで僕は、せっかくだからやらせてあげることにする。トムが、「アイワナプレイガンダムゲーム」と言った。僕は「ノー、ノーガンダム。アイドントハブガンダムゲーム」と答えた。するとトムは残念そうな顔をしたが、すぐに立ち直って、「オニムシャ、オニムシャ」と言った。僕は、「オー、ノー、ノーオニムシャ」と答えた。するとトムはすごく悲しそうな顔をした。そこで僕は持ってるゲームを二人に見せてあげた。マイケルは、ウイニングイレブンを見つけると、「オー、ウイニングイレブン、アイハブウイニングイレブン」と言った。とても綺麗な発音だった。けっきょく僕らはウイイレ10をやることになった。最初はトムとマイケルが対戦した。マイケルは日本を使った。トムはなぜか、ノルウェーを使った。僕は、どうしてノルウェーなんだろうと、不思議に思った。どうしてノルウェーを選んだのですか、ノルウェーが好きなんですか。と質問しようと思ったけど、英文も考えてみたけど、その英文の正しさに自信がなかったし、発音にも自信がもてなかったので、けっきょく言わなかった。それで、0-0のまま延長戦に突入して、中村がゴールを決めて日本が勝った。マイケルは、オーイエーとか何とか言って喜んだ。僕もなんとなく、オーイエーとか、それっぽいことを言った。それから、マイケルと僕が勝負をすることになった。マイケルはまた日本を選んだ。僕は、受け狙いでアメリカを選んだ。トムとマイケルは、それを面白く思ったらしく、「オー、hahaha」と笑った。僕は「アイラブ、アメリカ」と言った。そして、試合は宮本がオウンゴールして、1-0でアメリカが勝った。僕はマイケルに勝ったわけだけど、そんなに嬉しくなかった。なんていうか、どうでもいいと思った。どこが勝とうが、どうでもいい。誰が勝とうが、どうでもいい。どうでもいい。どうでも。トムとマイケルは、「グッナイ」と言って僕の部屋を出て行った。

 僕は今とても切ない。切なくてたまらない。胸がきゅるきゅるする。今すぐ梨華ちゃんに会いたい。梨華ちゃんの胸の中に飛び込んでいきたい。それで、頭をなでなでしてほしい。梨華ちゃん。いま、何してるのかな。