占い師

 南越谷についた。ちょっと寒い。もう少し厚着をしてくればよかったかなあ。だけど僕は思った、「少しくらいの寒さなんて、我慢すればそれですむことじゃないか」と。僕はかくも弱き自分を叱りつけ、目の前を歩く女子高校生のふとももから足首のあたりまでを尊敬のまなざしで見つめながら歩いた。

 駅を出て、手もちぶさたな感じでふらふらしていると、紳士服をきたお兄さんが話しかけてきた。「すいません、ちょっと時間ありますか。占いの勉強をしているものですが」。僕は時間があったので、占ってもらうことにした。きっと彼はいつも道ゆく人々に冷たくあしらわれているのだろう。かわいそうだ。そういう気持ちもあった。彼の目は最初から最後までメガネの奥で不安げに泳ぎつづけていた。とにかく僕は彼によって未来を占われ、「定職についたほうがいいですね」という助言を授かった。さらに「定職についたら、生活も安定するじゃないですか」と言われた。「当たり前じゃないですか、そんなの、占い師じゃなくてもわかりますよ、そんなの」とか言って論破してやろうかと考えたけど、ぎりぎりのところでその言葉を呑み込んだ。そして僕は僕の夢を語った。占い師は、「あきらめなければ、その夢はかなうでしょう。けれど、ちょっとでも迷いがあったらだめですね。定職についたほうが無難かと思われます」