スーサイド

 完全自殺マニュアルを読んでいて僕は思った。やっぱり死ぬなら服毒だろうなって。というのは、うまいこと服毒をやれば万が一死ねなくても後遺症が出ないからだ。僕はそれを改めて学んだ。後遺症がなければ、もう一度死ぬことができる。首吊りや飛び下りはよくない。だめだ。もし失敗すればひどい後遺症に支配されてしまう。頭が決定的にこわれちまったら自殺を試みることさえできない。だから僕は結局のところ、死ぬよりほかにしようがなくなったら、うまいこと服毒して死ぬつもりである。

 完全自殺マニュアルを枕元に置いて眠って、朝起きたら、消えてなくなっていた。誰のしわざかな。妖精さんのしわざかな。それとも梨華ちゃんが持っていったのかな。ふっち君死んじゃやだっていう気持ちが、梨華ちゃんをこういう行動に走らせたのかな。てなことを僕は考えたけれども、実際のところどうであったか、犯人が誰かはわかっていた。犯人はうちのママりんです。朝はやくお母さんが入ってきたことに、僕は気付いていました。お母さんは「あら、なにこれ、きもちわるいものを・・・」とつぶやいて、それから足早に部屋を出て行きました。僕は「ああ、持っていかれたな」と思いながらも、それを確認することはせずに、目を閉じたままでいました。そうしたらいつの間にか眠ってしまい、淡い夢のなかを少しばかりただよったのち、また目を覚ましました。

 完全自殺マニュアルを、僕は探しはじめたのだが、はっきり言って3分もたたないうちに見つかった。リビングルームに行って、戸棚の上をながめた。あやしげな野球帽があった。それを持ち上げてみた。するとそこには、完全自殺マニュアルがあった。表紙は金や銀に彩られ、きらきらと輝いている。少しまぶしかった。僕はなんとなくおかしくなって、「ブフッ」っという声を出して笑った。完全自殺マニュアルはそのままにしておくことに、僕は決めた。