ゆきどんと君へ

 僕がどれだけあの子を好きでいたって、あの子が好きになるのはきっと、サーフボードを脇にかかえて浜辺を歩く、おしゃれなあいつらなんだろう。僕はマクラをあの子だと思って抱きしめながらそんなことを考える。大きな波がやってくるとあいつらはそれに乗じて素敵にサーフィン。あの子はその素敵を見るや夢心地。僕が水死体になろうがなるまいがおかまいはなし。それでも僕は沈みゆきながら思うんだ。君が好きだよって。さようなら君よ。幸せになれ。一番かっこいいのは僕だろう? 死んでからでもいいから、好きになっておくれ。

 脳みそは沸騰していて、魂は赤く肥大していて、常識なんて意味を持たないで、金は燃やす為にあるもので、地位と名誉は捨てる価値さえなくて、僕のすべてはどう考えてもたった一つのものの為にしか使うべきではないと思ったんだ。梨華ちゃんのためだよ。すべてはその為だけなんだ。爆発しそうなんだ。地獄よりも天国よりも力強い力なんだ。いったん爆発が起こればきっとそんなところよりずっと先に行くだろうと思うんだ。僕の心にある、梨華ちゃんへの愛は、伊達や酔狂じゃねえし、一時の気の迷いでもないし、若気のいたりでもあるわけなくて、ぜったいに笑い事にはならないような一生も何生もかけた大問題であり、核兵器より切実で、宇宙の伸縮や仏教の尊厳をも一呑みにする生きるか死ぬかを越えた事案なんだ。僕はどうにかなってしまいそうで、人を殺しかねないような気もするし(いま僕のことを笑っている、あんたのことだ)、扇風機を蹴り倒しては起し、けり倒しては起し、頭を抱えながら部屋を何周も何周もするんだ、「気ちがいだ、終わりだ、大好きだ、絶望だ、この世の終わりがくるぞ!」と叫ぶんだよ! そうそう、梨華ちゃんがエコをしようねというから、僕は絶対にエアコンは使わないんだ。携帯のアダプタは必ずひっこ抜くよ。僕に好感をいだいてほしいよ。ああ、いとしい思いが、非常に無節操にあふれてきやがる。愛しさは絶望にまみれながら、どんどん成長していく。どんどんどん。ゆきどんどん。