相部屋のA氏*1がリモコンでテレビをつけようとしていたが、なかなかつけられなかった。
僕「テレビがつかないですか?」
A氏「ええ、ボタン押してもつかないんですよ。あなたも押してみますか?」
僕はリモコンを受け取った。
「どれどれ、ポチっとな。あ、ほんとだ。反応しませんですね」
A氏「どうすればいいのかなあ」
僕「テレビの主電源が入ってないんじゃないですかね?」
A氏「そうかもしれない」
A氏は両手を使ってその薄型テレビをまさぐり始めた。でもあきらめて、「どこにもないですよ」と言った。
僕「そんなことはないと思いますけどねえ。どれどれ」
僕は薄っぺらいテレビに近づいた。黒い画面に自分の顔が映った。
「うーん、なんじゃこりゃ。未来型すぎてスイッチの場所の見当がつきません。うふふ」
A氏「あはは!」
僕が酒のあるちゃぶ台の方に向かいかけたその時、
「あった! スイッチがありましたよ!」とA氏。
「ほんとですか!」
立て膝をついたA氏は、薄型テレビの頭頂部を指差して、
「ここです。てっぺんのところにスイッチがありました!」
「なんとまあ、そんなところに。さすが未来型テレビですね」と僕は言った。
A氏によってテレビがつけられた。
中国の大地震のニュースが流れていた。
B君*2が言った。
「あ、今、エンタの神様やってますよね。見ましょうよ」
「いいですよ」と言ってA氏はチャンネルを変えた。
B君「あ、すいません。俺、エンタの神様、好きなんですよ」
それから30分くらい、僕ら4人*3はエンタの神様を見ていた。
どうしてバスツアーに来てまでエンタを見なければならないのだろうと思ったけど、それは言わないで、ちゃんとエンタの神様を観賞した。見たら見たで面白かったけど、「ここまで来てなんでエンタやねん!」という気持ちは消えなかった。今もまだ消えていない。怒っては全然いません。