お尻からオナラを不可避的に出しまくっていると、個室の隅っこにゴミ箱のようなものがあるのに気づいた。「これはもしかしてアレ用のゴミ箱だろうか」と思い、中を見たいという気持ちが膨らんだが、それをしてしまったら人間としてはもうお終いのような気がしたので、中は見なかったが、箱の外側は死ぬほど見た。
オナラは13回くらい出たけど、ウンチは出なかった。念のため、おしりを拭き拭きしていると、「そろそろ開演しまーす！ 早く着席して下さい！」という係員の切羽詰まった声が聞こえた。拭き拭きはそこそこにして水を流し、棚に置いた梨華ちゃんへのファンレターを手に取る。ピンク色のドアを押し開けて個室を出ると、黒服を来た背の高い男と目があった。ちょっと怒ったような顔をしている。僕は目を逸らして洗面台に歩み寄り手をよく洗った。梨華ちゃんと握手するのだから髪をきちんと整えたかったけど、黒服の男の視線を左側頭部に非常に強く感じ、鏡を見ながら3秒ほどでサッと整えて、小走りで女子トイレを出た。
