音楽ガッタスその2

 そばにいた超有名ヲタメロンむしゃむしゃ犬郎が尋ねた。
 「ふっちさんは整理番号いくつですか?」
 「150番です」僕は若干緊張しながら答えた。
 「え! すごいなあ! それだったら、最前狙えるじゃないですか!」
 「そうですね。でも遅刻しちゃいました。やっちゃった!」
 僕は夜の横浜で迷ってしまい、開演時間ぎりぎりに到着し、その時には整理番号150番の人が入場する時間はとっくに過ぎていたのである。でも僕は「最前がどうとか、そんなことはどうでもいい、梨華ちゃんが肉眼で見られれば、それで十分だ。贅沢は敵だ」と思った。しかし「梨華ちゃんとは絶対に結婚したい」とも思った。
 外から中に入ろうとすると、チケットの整理番号を確認する人が「チケットを見せてください」と言ったので見せた。この人はきっと、「150番という、こんなに若い番号なのに、今さらやって来るなんて、とんだドジ野郎だな。この番号なら最前も夢じゃなかったのに、とんだドジ野郎だな」と思ったことだろう。

 会場の中で僕は、2ヵ月ぶりに梨華ちゃんにめぐり会った。パーマがかかったくるくるの茶色い髪が左右に垂れて、ダンスに合わせてそれは軽やかに舞った。上下の衣装の間に見える梨華ちゃんのくびれは、とても理想的にくびれていた。どの角度から見てもそれは極めて美しいラインを保っていた。それから僕はつい、梨華ちゃんの細いくびれを掴んで前から後ろからピストン運動しているところを思い浮かべてしまったが、「いけない! そんないやらしいことを考えたらいけない! 梨華ちゃんはいま、一生懸命踊っているのだから」と自分のいやらしい、邪悪きわまる精神を叱り飛ばした。そして僕は、ステージまでの距離が遠く視力が悪いために、梨華ちゃんの顔はぼんやりとしか見えなかったが、その顔をとても愛しい思いで見つめながら、「梨華ちゃん、大好きだよ、結婚したいよぅ……」と呟き、熱い涙があふれ出るのを堪えるのであった。