観劇

 こんにちは、ふちりん・オブ・ジョイトイです。びっくりするほどM字開脚! さて今日は大学時代の友人のルミちゃんが出演する舞台を、ヲタモダチ斉藤君と見に行ってきました。ルミちゃんは、僕が大学時代にやや熱烈な片想いをしていた可愛い女の子です。仏教について研究するゼミで一緒でした。黒縄地獄等の8つの地獄について共に学びました。彼女は高校時代演劇部に入っていて、大学卒業後、グラフィックデザイナー的なことをしていたのですが、「私が本当にやりたいのは、絵を書くことじゃなくて、演劇なのだわ!」と気が付いたらしく、最近、演劇の道を歩むために脱サラしました。会場は新宿の真ん中らへんにある「新宿ギガンティックアリス」というところでした。和訳すると「すんごいでかいアリス」ということになります。実際の会場は小さくて可愛かったので、「おりょ? こりゃおかしいぞ」と思いました。終演後、ルミちゃんに尋ねてみると、「あー、ふちりん、それはね、『ここは小さな劇場だけど、気持ちは大きくありたいねん』とかそういうことらしいんだよね」と答えました。

 僕と斉藤君は早めに新宿に行き、カラオケ館に入りました。斉藤君はミスチル等の爽やかな歌をとても上手く歌い、僕はガガガSP等の青臭い歌をときどき声を裏返しながら歌いました。最近ヒトカラをしていないせいか、ひどく下手になったようでした。カラオケ館を出て、ルミちゃんの舞台が行われる会場、新宿ギガンティックアリスに向かって歩き出しました。「差し入れ的なものを持っていった方がいいかな?」と思い、斉藤君にそう告げました。
 「その方がいいでしょうね。花なんかどうですか?」
 「花はちょっと大げさなんじゃないの? シュークリームとかがいいんじゃない?」
 「あ、いいっすね、シュークリーム。なんだか俺も食べたくなってきましたよ」
 そう言って斉藤君は舌なめずりをしました。すると、僕は急にウンコがしたくなり、お尻の谷間に右手を差し込みました。
 「あ、やばい、うんこしたくなってきたよ!」
 「ちょっと、大丈夫ですか? でも会場でうんこすればいいですね」
 「会場でうんこするのか。なんか恥ずかしいな……」と僕はおしりを優しくマッサージしながら答えました。
 そして僕らはとうとう新宿ギガンティックアリスに到着したのですが、小さな劇場だったのでお客さん用のトイレはありませんでした。
 「ちょっと斉藤君、大変! ここ、おトイレがないみたいだよ! うんこがしたいよ!」
 僕は不安な気持ちになりながら斉藤君にそう語り掛けました。
 「確かにないですね。これは大変ですね。ひとまず外に出ましょう。トイレのあるところを探しましょう」
 心の優しい後輩である斉藤君は緊迫した面持ちでそう言いました。開演時間は15分後にせまっていました。コンビニでも探そうということになり、劇場の外に出ました。コンビニは比較的簡単に見つかりました。
 「アッー! 斉藤君、朗報です。コンビニがあったよ!」
 「あ、ほんとだ。よかった。でもふっちさん、俺の名前は斎藤ですよ。いま斉藤って呼びましたよね。旧字とか新字とかいう問題ではなく、そもそも意味が違いますので、気をつけていただけませんか?」
 「わかったよ。ごめんよ、斎藤君。じゃあ華麗にうんこしてくるね」
 「じゃあ俺は、東京1週間でも立ち読みして待ってますよ」
 「おやおや、斉藤君、東京1週間を読むとな? 君は今度デートでも行くのかい?」
 「何度も言いますが、俺の名前は斎藤です。そもそも斎と斉じゃ意味が違うんです。こんど間違えたら先輩と言えどもタダじゃおきませんからね。あと、俺はデートなんて行きませんよ。俺は今あのメイド喫茶に夢中なんです。うさぎちゃんが好きなんです。うーたん!」
 「あ、そうだったね。君にはうさぎちゃんがいたね。いつかうさぎちゃんとデートできるといいね」
 そう言い残して僕はトイレへと向かった。客用のトイレが存在しないコンビニもあるので、なかったらどうしようと不安になったが、トイレはちゃんとあった。しかし、「ただいま故障中」という張りがしてあった。どんよりとした気持ちになった。足取り重く本棚の方へ歩いた。僕が声をかけると、斎藤君は東京1週間から顔を上げた。
 「あ、ふっちさん。もうウンコ出し終えたんですか。早いですね。ウンコと射精だけは人より早いんですね。他のことは何もかも遅いのに。さあもうすぐ開演の時間ですよ。急ぎましょう」
 「あのね、ものすごく言いにくいんだけどね……、トイレが故障中だったよ。てへ!」
 「てへ! じゃないですよ。少しも可愛くないですよ。を良く見てみろよ。お前はヒゲが濃いし、白髪も多すぎるんだよ。あ、もうすぐ始まっちゃいますよ。どうするんですか。他のトイレを探しに行きましょう」
 「あのねえ、いまちょっとウンコしたい感じが治まってきてんねんけど」
 「なんで関西弁なんですか。ウンコが治まったのは、おそらく一時的なものですよ。演劇は多分2時間くらいかかるから、その間に必ずウンコしたい波が訪れますよ。そしてその波は、さっきのよりもっと大きな波ですよ。そうなったらどうするんですか。あの劇場にはトイレがないんですよ。外に出れる雰囲気じゃない時にその波が来たら、漏らすことにもなりかねませんよ。もし漏らしたらあなたは逮捕されてもおかしくないですよ」
 「なんで逮捕されるの? ウンコ漏らすのって犯罪なの? 適当なこと言わないでよ! とにかく、もう一度トイレを探す旅に出よう」
 僕らはコンビニの外に出て首を左から右にゆっくりと振りました。限界まで右に捻ったとき、僕の目は、公園らしき雰囲気の敷地を捉えました。ほぼ同時に斎藤君もそれに気が付いたようで、「あ、ふっちさん、あれって公園じゃないですかね。公園ならトイレがあるはずですね。行ってみましょう」と言った。
 「そうね、行ってみようか」
 ウンコしたいの波がかなり弱まっていた僕は、やや低いテンションでそう言いました。コンビニのすぐ近くにあったそれは、やはり公園でした。公園の中に足を踏み入れた僕は、トイレらしき小屋を発見しました。するとすぐにウンコの波が舞い戻ってきました。さざ波のようなそれをケツの内部のヒダに感じると同時に「もしトイレにがなかったらどうしよう、公園のトイレにはよくあることだ。僕はそれほどティッシュを持っているわけではないのだ」と思いながら、僕はトタンで出来た小汚い小屋へ入りました。大便をひねり出すための個室に入ると、嫌な予感が的中しました。がなかったのです。を取り付けるための器具すらそこには存在しませんでした。「を提供することを最初から放棄しているこのトイレは、トイレの風上にもおけないトイレだな!」と腹を立てました。「ウンコが出る直前にここに駆け込んできたティッシュを持たない男性は、いったいどうすればいいんだい。ティッシュがないけど肛門を締め付ける力も限界だぞ!と感じたその男性は、ここでウンコをせざるをえないだろう。ウンコをしたまではいい。しかし、ウンコをした後、その男性はいったいどうしたらいいんだ。どうしろっていうんだ。しかも下痢便だったらどう責任とるつもりなんだ行政は。こういうのを画竜点睛を欠くと言うのではないのか?」
 僕は行政に対して強い不信感を抱くと同時に、「画竜点睛を欠く」という知的な言葉を使えたことに大きな満足を感じながら、公園の出口のところにカッコつけて立っている斎藤君の元へ戻った。彼は右足をちょっと前に出して、腕を組んでいた。
 「あれ? ふちりん、ずいぶん早いですね。どうしたんですか。もしかしてまた故障ですか」
 「いや、違うんだ。がないんだよ。画竜点睛をさ、欠いているわけ。まったく、行政を牛耳っている人は何をやってんだろうね。ここは東京だから石原都知事か。ちきしょう! 石原さんめ! ちゃんとやれってんだよ。関係ないけど、芥川賞の選評がいつも偉そうすぎると思います。もっと謙虚さを持つことが必要ではないでしょうか。地位や名誉があったら、偉そうにしててもかまわないんですか。違うと思いますよ僕は。実るほど頭を垂れる稲穂かなという言葉があるじゃないですか。石原さん、あなたはこの句についてどういう見解を述べられますか? こんな僕にどうせ説教するんでしょう? うんざりだ! うんざりだよ!」
 「あ、がなかったんですね。ティッシュ持ってないんですか? 俺は花粉症ですので、ティッシュなら山ほど持っていますよ」
 斎藤君はアコムティッシュ1袋を鞄から取り出した。
 「すまない。恩に切るよ」
 僕はドラマでよく聞く感じの台詞を言ってそれを受け取り、トイレへと小走りで向かった。個室に入り、ズボンとパンツを同時に下ろし、ウンコ座りをした。僕のおちんちんが目に入った。ちんこは小さく縮み、皮をかむっていた。ちんこが小さいことと皮をかぶっていることが恥ずかしくなった。せめて包茎からは逃れようと思い、皮をむこうとした。しかし、ちんこが小さく縮んでいたので、余っている皮の量がとても多く、なかなか剥くことができなかった。やっと剥き終わると、ウンコを出すことに集中した。ほぼ治まっていたウンコの波はすぐにさざ波になり、どんどん大きくなった。
 「この調子なら早い時間にウンコが出てくるぞ、あとは下痢じゃないかどうかと、ちゃんと出切るかどうかが問題だ」
 そう思いながら僕は力んだ。
 「早くウンコを終了させないと、ルミちゃんの舞台が始まってしまうぞ」
 その時、僕はルミちゃんの顔を頭に思い描いてしまった。
 「ああ! ごめんねルミちゃん。ウンコをしながら君のことを考えてしまったよ」と僕は謝った。
 そしてウンコが出てきた。メリメリという音が聞こえてきた。チャポン! そしてチャポン! 2本くらい出た。近年稀に見る快便だった。僕のおしりから出たウンコちゃんは、2本仲良く寄り添っていた。きれいな茶色をしていた。まるで焼き芋みたいだった。ほかほかしていた。おしりをティッシュで拭いた。ほとんどウンコはに着かなかった。それだけスルッと出たということであろう。僕は時計を見た。開演までは後5分もあった。
 「ああ、よかった。間に合った!」
 そう呟いてパンツとズボンを同時に上げて、水を流した。

 僕は、ウンコに悩まされることなく演劇を見ることができた。ルミちゃんの演技は、一つ一つとても丁寧で心がこもっていた。声には芯があるし顔はかわいいし表情は豊かだった。これから経験を重ねていったら、いつかきっと大物になるだろうと僕は思う。終演後、ルミちゃんに「あのね、これからもずっと応援してるからね」と言ったらルミちゃんはにっこり笑って、「ふちりん、ありがとう。大好き!」と言った。