ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

4月29日のガッタスイベント

 こんにちワン! 僕は昨日、ガッタスサポーターミーティングというイベントに行ってきました。もちろん、梨華ちゃんが出るからです。こないだ名古屋まで行って、梨華ちゃんが出演する舞台『細雪』を見たので、そのことを是非とも梨華ちゃんに伝えたかった。1ヶ月くらい休みなしで公演が行われており、とても大変な舞台だと思ったし、僕もけっこう大変な思い(0泊3日のバス旅行)をしたので。ガッタスイベントの終わりにはハイタッチ会があるから、そこで伝えようと思った。しかし何しろハイタッチ会なので、梨華ちゃんに声をかける時間は1秒あるかないかだと予想され、どうしたものかと考えた。どうやったら1秒で伝えられるだろうと。そこで僕は、ハイタッチしながら「こいちゃん、おつかれー」と役名で声をかけようかな、と思いました。

 そのことを、ツイッターで不安げに呟いたら、モトマチさんという人が「ふちりんならできる!」と励ましてくれたので、嬉しい気持ちになりました。でもやはり不安は晴れなかったので、「もし失敗したら優しく抱きしめてください」と返事をしました。するとモトマチさんは、「優しく抱きしめるだけでなく、ベッドに押し倒して顔中をペロペロするよ!」と答えたので、ちょっと引きました(引いてません)。チマキさんは、「間違えて胸をタッチしないように気をつけてください!」と言ってきたので、「まったく、愉快な連中であることよ!」と思いました。

 梨華ちゃんは僕がパイタッチしようとしても、完全すぎるほど完全にガードすると思います。というのは、こないだ何かの番組で座りトークしている時、ミニスカを穿いた梨華ちゃんは、これでもかというくらい固く、ミニスカの裾を抑えていたからです。このように、パンチラさえ絶対にしたくない梨華ちゃんですから、パイに対するタッチなどは命をかけてでも阻止してくると思います。さすがは27歳にして処女なだけあります。梨華ちゃんのそういうところが大好きです。僕は32歳で童貞です。てへ。

 ハイタッチ会のことは大体それでいいとして、次に、服装をどうするかということが議題に上がってきました。梨華ちゃん推しTシャツを着ていくかどうか。面白いことに(面白くない)、僕は未だに梨華ちゃん認識されていません。大学4年、23歳のころに梨華ちゃんを好きになって、今は32歳ですから、もう10年間も梨華ちゃんヲタをやっていることになります。しかし未だに、梨華ちゃん握手会で僕に会っても「この人、なんか見たことあるような気がするけど…誰だろう」みたいな顔をするだけなのです。「あ、ふっち君!」みたいな顔はしてくれません。それは僕の自己アピールや参戦回数(べつに戦いません)が足りないだけであって、梨華ちゃんにはまったく非がないので、梨華ちゃんのことは責めないであげてください。責めたらぶっ殺します(殺しません)。

 それでもやはり、未だに梨華ちゃん認識されてないことは、正直に言ってとても悲しいことなので、そろそろ認識されたいな、という気持ちがあり、まずは推しTを着ていって梨華ヲタであることをきちんとアピールせんければならんだろう、と思いました。8年前くらいに買ったピンク色のツアーTシャツを、タンスの奥から引っ張り出してきて、黒のロンTの上からそれを着てみました。それはかなりドぎついピンク色だったし、ややブカブカだったので、「やっべー、けっこう恥ずかしいぞこれは」と思いました。その恥ずかしい旨をツイッターに書いたら、現場に行ってきた℃太郎さんから「会場ではオレンジTが多いよ。ピンク色は目立つかも」という言葉をいただいたので、やっぱり推しTを着ていくのはやめようかなと思いました。ガッタスというチームのイベントで、梨華ちゃん個人推しを前面に押し出していくのは、よく考えたらあまり空気が読めてない行為のような気がしてきました。僕は、Tシャツを着るかどうか迷った結果、会場の様子を実際に見てから決めることにしました。

 僕はおしゃれ雑誌smartを参考にして服を決めて、鼻毛を極限まで切り、家を飛び出しました。東京FMホールに向かう途中の電車では、谷崎潤一郎の『細雪』を読みました。4姉妹の末娘の妙子(あだ名が「こいちゃん」)に、舞台上の梨華ちゃんを重ね合わせながら読んでいると、心がポカポカと温かくなってくるのを感じました。また、谷崎さんの文章は思ったより読みやすく、ルビもけっこう振ってあるので、それほど苦しまずに読み進めることができます。梨華ちゃんを思い浮かべながら楽しく読書していると、すぐに最寄りの半蔵門駅に着きました。僕は本をカバンにしまい、東京FMホールに向かいました。

 会場の前にはたくさんのヲタが集まっていて、なにやら楽しそうに話をしていました。誰か知り合いはいるかな、と思ってチラチラと目を向けましたが、知り合いは1人もいませんでした。そもそも、僕には梨華ちゃんヲタの友達がいません。10年間も梨華ヲタをやってるのに、1人もいません。このようなえげつない日記を書いていれば、そりゃあ、梨華ヲタの友達ができるわけありません。僕自身、梨華ちゃんのことが好きすぎるため、推しかぶりの人に対して敵意を抱いているようなところがあったので、梨華ヲタの友達がいる方がおかしいと思います。ただ、『もうこれ以上』という大手梨華ヲタサイトのスズキさんは、僕に優しくしてくれました。一緒に花見をしたことをよく覚えています。こんな日記を書いている僕のことを怒ったりバカにしたりせず、温かい笑顔を向けてくれたので、本当に嬉しかったです。あと、『テレビの土踏まず』のピエールさんも、けっこうな梨華ヲタだと思うんですが、僕と仲良くしてくれました。いつかの梨華ちゃんの誕生日イベントの後、2人で飲みに行ったことがあるんですが、僕のような低劣な人間にも気遣いを忘れない、とてもいい人でした。大手サイトの人に好かれていたことをアピールしたいわけではないんだけども、結果的にそうなっているので、「大手になるだけあって、人を見る目があるんだな!」と思います。すみません。調子に乗りました。
 でも、今となっては、僕は梨華ちゃんのファンと仲良くしたいと思っています。今までみたいに敵対心を持つようなことはやめて、数が少なくなってきた上に高齢化してきたファンたちと心をひとつにして、梨華ちゃんを支えていかなければならないと。僕も大人になりました。まだ童貞ですけど、しばらく日記を書いていない間に色々あったので、考え方はあるていど丸くなってきました。

 会場の中では、ガッタスのオレンジTシャツを着ている人が多く、個人推しを前面に押し出している人はほとんどいなかったので、「あ、これでは、梨華ちゃんのピンクTシャツを着るのはちょっとアレだな」と思いました。黒いショルダーバッグの中のピンクTシャツを見つめながら、「でもやっぱり着ようかな。着てる人は何人かいるし」と悩みましたが、やはり結局は着る勇気が出ないまま、イベントが始まりました。たくましいハゲの芸人が舞台に踊り出てきました。すごく声が大きい人で、がさつな神経をしてそうだったので、うらやましい!と思いました。この世で生きていくにあたって最も重要なのは、声の大きさと神経のがさつさである、ということを常々感じている僕は、彼のことをうらめしい目で見ました。しかも梨華ちゃんと同じ舞台に立っている。なんていう恵まれた人なんだ。僕はそう思いながら彼に向けて笑顔で拍手をした。

 そしてガッタスのメンバーたちが次々と出てきた。梨華ちゃんの背番号は9なのだけど、そのがさつハゲ芸人が「背番号11、石川梨華ァ!」とアナウンスしたため、梨華ちゃんは困惑した顔で隣の矢島舞美ちゃんに話かけたりしていたので、かわいかったです。そのイベントで、梨華ちゃんはよくしゃべりました。実によくしゃべった。ガッタスのメンバー10数名の中で、一番しゃべってたんじゃないかな。でも話が長くなりすぎることもなく(たまに長くなりすぎてはいたけど、怒らないであげてください。一生懸命すぎちゃっただけなんです)、うまくイベントを進めていたと思います。とくに印象的だったのは、梨華ちゃんのツッコミでした。あのツッコミ力はすごい。梨華ちゃんってあんなにツッコミ気質あったっけ? いやほんとによくツッコんでた。がさつハゲ無駄マッチョ芸人さんや、他のメンバーが繰り出すボケを、海岸のゴミ拾いをするみたいに丁寧に拾っていった。
 ガッタスのコーチから選手へのコメントが読まれるコーナーがあって、コレティは、休憩時間にボールを蹴っ飛ばしてコーチに当てるらしいのである。それを受けて、つるっパゲまっちょバカ芸人さん(すみません)が、ボールを蹴っ飛ばす動きをしながら、「私を昔みたいに歌って躍らせろ!と言ってコーチにボールをぶつけてたんですよね!」という面白いことを言いました。すると梨華ちゃんが間髪をいれず、鋭い口調で、「いやいや、それコーチに言ってもしょうがないから!」というツッコミを入れました。梨華ちゃんのそういったシーンがイベント中にかなりたくさんあり、僕は本当梨華ちゃんのツッコミ力に感心したのでした。

 ガッタスの練習中の写真をみんなで楽しく鑑賞する、というコーナーでは、メンバーたちの面白い写真が次々に公開されていきました。岡井ちゃんが体育館の床に、ややセクシーな感じで仰向けに寝そべり、ほぼ真上のカメラに向かって爽やかな笑顔を向けている面白い写真があったのですが、梨華ちゃんが「これってどの方向から見てもなんかいい感じだよ!」と言ってその大きな写真ボードをぐるぐる回しました。それで会場はワッと盛り上がり、その岡井ちゃんの大きな写真ボードが客席の最前列の人に手渡され、お客が1人ずつ手にとって眺めていくことになりました。そのボードがだんだん僕(9列目)に近づいてくると、胸がドキドキしてきました。岡井ちゃんの写真は、先ほど梨華ちゃんがしたように、客によってぐるぐる回転させられていました。隣の人にそのボードを手渡すときに、ぐるぐる回転させながら手渡していたので、それがちょっと面白かったです。僕にその写真が回ってきたときも、空気を読んでグルグル回しながら隣に手渡しました。僕にボードが回ってくる直前に、客席のザワザワが大きくなっていたので、梨華ちゃんが僕の方を指差し、「ちょっと! あそこ! 何してるの! すごい回してるし!」みたいなことを言いました。これもツッコミですね。梨華ちゃんの冴え渡るツッコミが、まさに僕がボードをぐるぐる回している時に行われたので、つまり、僕は突っ込まれたことになります、梨華ちゃんに。僕がボケて、梨華ちゃんが突っ込む、ということが事実として起こったのです。厳密に言えば、タイミング的に、僕とその両隣の3人くらいがツッコまれた感じではありましたが、それでもやはり僕が観衆の面前で梨華ちゃんに突っ込まれたことに変わりはないわけであり、「頭がフットーしそうだよお!」となりました。梨華ちゃんはツッコミながら僕のことを見ていたので、僕は胸を高鳴らせ、変な笑顔を浮かべながら梨華ちゃんのことを見つめ返しました。

 最後の挨拶が終わり、舞台には誰もいなくなりました。ハイタッチ会が行われる旨のアナウンスがあり、緊張が高まってきて、呼吸がやや困難になりました。最後の挨拶で、梨華ちゃんが「実は、個人的なことなんですけど、今日ずっと口内炎が痛かったんです」と言っていたので、ハイタッチのときに「ホイミ!」って声をかけようかな、と僕は思い始めました。実は僕は今、人間というよりもむしろホイミスライムなのです。童貞のまま30歳になると魔法使いになるって巷で言うでしょう。その言葉通り、ホイミスライムになってしまったのです。ある朝、奇妙な夢から目覚めると、1匹のかわいらしいホイミスライムになっていたんですよ。とても愉快でしょう。そんなわけでホイミが使えてしまうため、ホイミを唱えることによって、梨華ちゃん口内炎を治そうと思い立ったのです。

 でも結局は、名古屋の舞台を観に行ったことを伝えたいという気持ちがまさり、梨華ちゃんとハイタッチしながら、「舞台みたよ!」と自分なりに声を張って言いました。握手会やハイタッチ会で僕の声が聞き取れず、「え?」と言われ、そのまま別れる、ということだけは絶対に避けたかったので。握手会などにおける最悪の結果はそれだと思っているので。しかしそれが起こってしまいました、たぶん。普段の生活であまり声を出さないためか、思った以上に声が出ていなかったかもしれず、最初は笑顔だった梨華ちゃんは、何のことかよくわからないような様子で不安そうな顔をしていました。梨華ちゃんは、聞き返すこともなく、そのまま次のファンにぐるっと顔を向けたので、僕の心はほとんどバラバラになりました。そして、身を乗り出すような勢いで声をかけた僕と梨華ちゃんとのコミュニケーションが全く上手くいっていないのを、次のハイタッチ相手である吉澤さんに見られていたことに気付きました。吉澤さんは同情するような目で僕を見ているような気がし、今すぐこの場からいなくなりたい、と強く思いました。 深く落ち込んでしまった私は、その後の10数人のアイドルたちと、死人のような笑顔を浮かべて「おつかれさまです…」と言いながら次々とハイタッチしていきました。矢島舞美ちゃんとか超かわいかったけど、僕の心は深く死んでいました。

 僕はボンヤリとした絶望に体中が支配されているのを感じながら、右足を前に出し、左足を前に出す、ということを繰り返しました。まるで会場から逃げるようにして、すぐに電車に乗り、さいたま方面に向かいました。僕らが旅に出る理由って、こういうことなのかもしれない。旅に出たい。激安の夜行バスに乗って、できるだけ遠いところに行こう。梨華ちゃんとの思い出は全てこの関東地方に置いていこう。電車に揺られながら僕は、誰かになぐさめの言葉をかけてもらえることを期待しながら、泣き言のようなツイートを携帯から次々に投稿していった。泣き言ではあるが、自分なりのユーモアをたっり織り交ぜるよう努めた。このような、ふみゅうとなる出来事があったときは、一刻も早くそれをユーモアの柔らかい衣で包まねばならないのだ。さもなければ、僕のような繊細すぎる人間は、とてもこの世で生きてはいかれないのである。

 帰る途中、アイドル好きの友人が近くにいることがわかり、2人で飲むことになった。泣き言のようなことを誰かに言いたかった僕は、梨華ちゃんとのハイタッチが大失敗に終わったことを、大いに自嘲を込めて話した。だいたいの話を終えた私は、「ねえ、ちょう切ない気持ちになるやつ見る? カバンの中に入っているんだけど」と友人に言って、ショルダーバッグの中から、梨華ちゃん推しTシャツを引っ張り出した。それはどぎついピンク色で、夜の薄闇の中でも、ギラギラと僕の目を刺した。

 友達と別れて、家に帰り、銀杏BOYSを聴いた。梨華ちゃんと会った後はいつも、切実な気持ちになって、銀杏とかサンボマスターとかを聴いて泣いてしまうんだよな。本当は、もっと楽しい気持ちになりたいんだけど。もっと笑顔になりたいんだけど。梨華ちゃんもきっと、その方が喜んでくれるはずだよね。ダメだなあ僕は。そんなことを思い、濃いピンク色のTシャツと、梨華ちゃんマイクロファイバースポーツタオルを抱きしめながら、ギュッと目を閉じた。梨華ちゃんに対してどういう気持ちを抱いてるのか、恋なのか、愛なのか、何なのか、もはや自分でもよくわからないのだが、よくわからないまま、閉じた目の隙間から涙が次々と流れ出てきて、しばらくそれは止まることがなかった。