その5

 まだ朝の5時くらいだった。「これはもう漫喫しかないだろう」と思って、漫画喫茶に行きました。

 モテキの主人公みたいな感じの中途半端にモテそうな兄ちゃんが受付に立っていました。その兄ちゃんは、私みたいな者にも優しく接してくれました。「執事みたいだなあ。この落ち着きとコミュ力が僕にもあったらなあ。この人うらやましいなあ。生まれてから今まで何回セクロンしたんだろう」と思った。そしてその兄ちゃんがセクロンしてる時のみっともないアヘ顔を想像し、「人間ってなんなんだろう。何のために生きるんだろう。どうしてこの兄ちゃんは、私のような赤の他人に朝っぱらからアヘ顔を想像されてまで生きなきゃいけないんだろう。この兄ちゃんも大変だなあ、まさか僕にアヘ顔を想像されているなんて夢にも思わないだろうなあ。かわいそうに」と考えながら、受付に関する色んなことを済ませ、指定されたリクライニングシート席に向かいました。「リクライニングシートだと! やだなあ。フラットシートじゃないと横になれないじゃん。でもしょうがないか」とやや落胆しながら、個室の扉を開けようとしたのだが、扉の開け方がわからなかった。ガタガタやってるうちに扉が開き、手前に引けばマグネットが外れて開く方式であることがわかった。

 狭い個室に入ると、大仰なリクライニングチェアにちょこんと座ったのだが、そのチェアをどうやったらリクライニングできるのかがさっぱりわからなかった。座ったまま首を四方八方に動かし、リクライニングさせるためのレバーのようなものを探したが、そのチェアのどこにもそれらしきものは見当たらなかった。そもそもリクライニングという英語が意味するところを漠然としかわかっていなかった私は、念のため目の前のPCでググって調べてみた。グーグル大先生によれば、リクライニングチェアとは、背もたれの角度を自在に変化させることが可能なチェアのことであるらしかった。私の考えていた意味と同じだったので安心した。であれば、私がちょこんと座っているこのチェアも、角度を自在に変えられるはずである、そうであれば必ず、角度をコントロールするためのサムシングがこの大仰なチェアのどこかに存在しているはずである。そう私は考え、床に這いつくばったり壁に張り付いたりしながらバールのようなものを探したが、やはりリクライニングをコントロールするためのレバーなりボタンなりはどこにも見つからない。しびれを切らした私は、とうとう力ずくでチェアをリクライニングさせようとした。レバーのようなものがないのなら、このような形でやるシステムが導入されているのかもしれない、そう思って、全力で背中を倒そうとしたが、チェアは不吉な軋みを周囲に響かせるだけで、少しもリクライニングしない。「壊したらやだなあ」と思って、その力ずく的方法はあきらめることにした。リクライニングチェアというからには、絶対に何らかの方法で背もたれを傾けることができるはずだとは思ったが、レバーもないし、力ずくでもリクライニングしないので、あきらめの気持ちに支配されはじめた私は、脱力気味にそのチェアへ背中を預けた。するとチェアの背もたれがスルスルと倒れて、足元の部分が盛り上がってきた。「うおー! こうやればよかったんかーい!」とびっくりしました。おわり。終わりじゃねーし。続くし。