ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

その30 ジャンケン大会が終わり、お見送りされる

 ジャンケン大会の優勝者がサトシに決まった後も、プレゼントをゲットしやがれジャンケン大会は続いた。梨華ちゃんの生声入り目覚まし時計のほかにも、ポラロイド写真などのお宝グッズが用意されていたのだ。ジャンケン大会は全部で3回行われたが、僕は3回とも1回戦で負けたので、これは逆にすごい!ツイッターでみんなに報告しよう!と思った。勝者たちは梨華ちゃんに呼ばれてステージに上がってみんなの注目を浴びた。僕はそれを見るたびに震え上がり、負けたことにけっこう安堵していた。梨華ちゃんの直筆サイン入りポラとか欲しいけど、今さらモノをもらってもしょうがないような気がした。梨華ちゃんの直筆サインはすでにいくつも持っているし。名前を入れてもらえるのはうれしいけど、名前なんてただの飾りだとも思えた。梨華ちゃんとこうやって同じ空間にいて、同じ時間を過ごすことより価値のあるものなんて何もないような気がした。ジャンケンの上位3名くらいが舞台に上がり、ポラにサインを書いてもらうのだが、ある一人のファンが梨華ちゃんに何か言うと、梨華ちゃんがほぼ即答で「それは無理」みたいな返事をしていたので、彼はいったい何を要求したのだろう、と不思議に思った。その時の梨華ちゃんの口調はかなり断固としたやや冷徹なものだったので、よほど無茶な注文をしたのかもしれない。「サインのとなりに、梨華ちゃんの携帯の番号を書いてください」というようなことを言ったのかもしれない。そういうナンパ行為に対しては梨華ちゃんはすごい拒絶反応を示すような気がする。今まで写真週刊誌に男と密会している写真を撮られたことが一度もないことから、男からの誘いは全て断っていることが想像できる。でも梨華ちゃん肉食系男子が好きだと公言しているから、ナンパされたりグイグイ来られたりすることはむしろ大歓迎なはずで、そう考えるとなんだか矛盾があるような気がする。いったいどういうことなんだろうか。わからない。

 用意された賞品が全てなくなり、ジャンケン大会は終了ということになった。梨華ちゃんはお見送りをしてくれるとのことで、先に舞台から姿を消した。周りの人たちはピンク色のTシャツを脱いで普段着に戻った。みんなにこにこしている。僕もきっとにこにこしていただろう。ホールから出ると、廊下に梨華ちゃんの声が響いているのが聞こえた。ファンの太くて優しげな声も聞こえた。僕は梨華ちゃんに何て言おうかなあ、と考える。たぶん梨華ちゃんの前を歩いて通りすぎるだけだから、時間は1秒くらいしかないだろう。だとすれば、「好きだよ!」だろうか。それは自分のココロにもっとも忠実な1秒ゼリフと言えるが、この場にはややそぐわない。空気が読めてない。梨華ちゃんの気持ちを考えていない。1、自分の気持ちに素直なものであること。2、空気を読めている感じのものであること。3、梨華ちゃんの気持ちを考えたものであること。これらに全て当てはまるような1秒ゼリフは何だろうか。
 そう考えている間にも、ファンの列はどんどん進んで行く。梨華ちゃんの声はどんどん近づき、大きくなってくる。梨華ちゃんの姿が見えた。目をふにゃっとさせて笑いながらファンに手を振っている。僕の目の前のファンが、梨華ちゃんに声をかけ、やや粘った。そのことにより、僕の割り当て時間が大幅に少なくなり、梨華ちゃんは僕をチラ見するくらいで、視線はすぐに次のファンへと流れていった。僕は梨華ちゃんをガン見していたので、梨華ちゃんのチラ見とも目が合ったが、目線がすぐに次のファンに行ってしまったことは悲しかった。僕はあまりに割り当て時間が少なくなったことに動転して「おつかれさま!」って言ったような気がする。「楽しかったよ〜!」と言いたかった。
 「よ〜!」と語尾を伸ばし、エクスクラメーションマークをつけるところがポイントである。そうすることによって、感じのいいヲタになれるのではないか、と思ったし、さきほどの3つの条件を十分に満たしていると思った。しかし失敗におわった。前のヲタのせいだ、前のヲタが粘るからこういうことになったんだ、なんで粘るんだ、自分さえよければそれでいいのか、僕だって6万4千円も払っているんだぞ!という荒んだ気持ちになりかけたが、「いけない! こんな些細なことで腹を立てていたらいけない。すぐにお金の話を持ち出すのも根性が汚い。こんなことでは梨華ちゃんに嫌われてしまう。もっとココロの広い人間、お金にこだわりすぎない人間にならないといけない。前のヲタさん、気にしないでね。僕は気にしてないから。梨華ちゃんとたくさんお話したいよね、僕だってそうだよ。お互い切ないよね。だっていくらお金を払ったところで、…っていけない! またお金の話を持ち出してしまった! だめだよ! ココロはいつもぉ〜清らかにぃ〜」と自分を戒めた。