事前に配られていたアンケートでは、「梨華ちゃんに叱ってほしいことは何ですか?」というお題が出され、僕は次のようなことを書きました。
「もう1ヶ月半も経つのに、いまだに梨華ちゃんの熱愛報道にショックを受けて立ち直れていないことです。でも大丈夫なので気にしないでください! 大丈夫です!」
最初の2行だけだとシリアスになりすぎると感じた僕は、3行目を付け足しました。ビックリマークも付けることにより、より冗談感が出たと思います。しかし僕がこれをアンケート回収BOXに入れた後、周りのテーブルからこんな会話が聞こえてきました。「昼公演では触れなかったらしいよ、あの話題」。
しまった!てなりました。昼公演で触れていないなら、きっと夜公演でも触れないだろう、昼公演しか来なかった人に対して礼儀を欠くことになるから、と思いました。もしこれが読まれた場合、僕は触れてはいけない話題に触れてしまっている空気の読めない人、ということになる。しかし僕はもうアンケートBOXに回答用紙を投入してしまっており、今さらどうすることもできない。神に祈るしかなかった。どうか読まれませんようにと。でももしかしたら、僕のが読まれることが逆に良いきっかけになるかもしれない、とも考えました。触れてはいけない話題にあえて冗談ぽく触れることによって、その話題がシリアスなものじゃなくなり、梨華ちゃんも含めたみんなの心が楽になる可能性がある。ガチ恋ヲタの筆頭である僕が自ら熱愛問題に触れることにこそ意味があるのではないか。
しかし結局のところ、アンケート用紙はスタッフによってしっかりと選別された上で、舞台にいる梨華ちゃんに手渡されていました。全ての回答用紙が入った箱から梨華ちゃんが1枚ずつ取り出して読む、というシステムではなかった。「そりゃそうだ、空気を読めてない感じで熱愛問題に触れてる人がいるかもしれないんだから。まあ僕がそうなんだけど。そしたらその場の空気は凍り付いてしまうだろう。スタッフが賢明で本当によかった」と思いました。また、そのコーナーの時までに醸成されていた空気には、熱愛報道ネタの入り込む余地は全くなかったと言っていい。たとえ冗談でも、「その話題に触れるなんて空気読めてない奴だ」となることは間違いなかった。そのとき梨華ちゃんによってテンポよく読まれていったのは、その場の空気に合った、ゆるふわな回答ばかりだったが、その中に一つ、メイドカフェに関するものがあったため、若干ビクッとなりました。
「メイドカフェ通いがやめられません。こんな僕を叱ってください」とのことで、梨華ちゃんは怪訝な顔で、「そんなに楽しいの?」とヲタに尋ねていました。僕もけっこうメイドカフェに通ってるため、自分が責め立てられているような気持ちになり、「楽しいんです…」と心の中で答えました。
それを書いた人は、「おいしくなーれ!」などと魔法をかける系のメイドカフェに通っているらしく、梨華ちゃんにもそんな感じの萌え台詞をお願いしそうになっていました。梨華ちゃんはそのお願いに応じるそぶりをみせたが、「絶対やらない!」ときっぱり言って次のアンケート用紙に移りました。
そういう、魔法をかける系ではなく、バーテンダー的接客をしてくれる系のメイドカフェに行ってる僕としては、「魔法とかのない、ただ会話を楽しむメイドカフェもあるんだよ。そこではメイドさんたちが梨華ちゃんのことをいつも気にかけているんだ。メイドだからと言って毛嫌いしないであげてほしいな…」と思いました。