ロッキーちゃんは、うちで飼っている愛犬。10歳。
シーズー犬である。血統書付きである。11万もした。
ある意味、僕より価値のある生き物である。
僕は、11万どころか、膨大な負債を発生させる存在だ。
価値があるとしても、頭にマイナスが付くのは間違いない。
今、ロッキーちゃんは、
台風が来てることもさして気にかけていない様子で、寝っころがってる。
ロッキーちゃんを見ていると、飽きない。
梨華ちゃんを見ているのと同じくらい、飽きない。
めちゃくちゃかわいい。萌える。
僕はたまに、そのかわいらしさにおいて、
梨華ちゃんとロッキーちゃんの区別が付かなくなることがある。
ロッキーちゃんを、「梨華ちゃん」と呼んでしまいそうになる。
「り、ロッキーちゅわん、きゃわいいね〜」
なんつったりして。
逆もまた然りであって、梨華ちゃんを見て、
「ロッキ、梨華ちゃん、かわいいな〜」
なんつったりする。
いつか、家族の前で、ロッキーちゃんのことを「梨華ちゃん」と
呼んでしまうのではないかと不安で仕方がない。
そんな事態が発生するのも時間の問題である。
もし発生したら、ロッキーちゃんも、
「梨華ちゃん? 誰それ? 俺、ロッキーだけど?」てなもんである。
母親も、
「ああ、この子、気が狂ってしまったのかしら!
病院よ! 精神病院に入院させないといけないわ!」と大慌てであって、
兄は、
「こいつ……終わってる……そんなに石川が好きなのかよ……」
と引きまくりである。
僕は、「梨華ちゃん……(あ、しまった、やっちゃった!)
ていう人がそういえばいるらしいね、ロッキー、知ってた?」
みたいな、そんな感じに誤魔化すのだろうけど、余計痛々しい。
幸せだった家庭が、まさに大崩壊である。大惨事発生である。
テポドンどころの騒ぎではない。
ああ、無情、一家離散。僕は勘当され、天涯孤独の身となるのだ。