ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

笑笑


それから解散してみんな帰ったけど、僕はまだ飲みたりなかったし、どこにも帰りたくなかったので、大宮駅に着いてから再度笑笑に向かった。その途中、路上で独りギターをかき鳴らしながら歌ってる人がいた。僕は立ち止まって煙草を吸いながら彼の歌を聴いた。彼の歌を聴いてる人は、僕だけだった。道を歩く人たちは、彼のことを無視して、見たとしても一瞥をくれるだけで、さっさっと通り過ぎていった。1曲終わると、僕は小さな拍手をした。それは僕の耳にも届かないような小さな拍手だったけれど、彼の耳には届いたようで(あるいは拍手している姿が目に入っただけかもしれないけど)、彼は僕に小さく会釈して、はにかむようにして笑った。2、3曲聴いた後、僕は彼のそばに歩いていって、「がんばってください」と言った。彼は、「ありがとうございます」と言って頭を下げた。さらに「最高でしたよ」と僕は心にもないことを言った。彼は、「ほんとですか、ありがとうございます」と言って、またはにかむように笑った。嘘なのに。最高だったなんて思ってやしないのに。僕は、僕のことを世界で一番最低な人間だと確信した。僕には、誰のどんな笑顔も向けられる資格がありません。


笑笑に入店した。「何名さまですか?」指を一本立てて「一人です」僕は飯を食ってまたビールを飲んだ。寂しくなったので誰かを呼び出したくなった。そんな自分に嫌気がさした。「くそったれが」「畜生め」「ふざけやがって」「石川の糞女が」「どうせウンコするんだろ?」「アイドルなんか」「中途半端なんだよ」「偶像なら偶像でいいのに」「なんで実在なんかするんだ」「大嫌いです」「全部が厭です」「後先考えないで生きてるの俺だけだな」「ベルトコンベアー」「それすらつとまるか」「結婚なんか絶対しねえからな」「なんで酒飲み始めると止まらなくなるんだろう?」「才能なんかありやしないのに」「能有る鷹は爪を隠す?」「爪なんかないくせに」「無いのに隠すのは究極的に卑劣な人間だ」「まだ無い爪を見せびらかしているほうがましだ」「俺は死ね、死ね、死ね、死ね」など、とりとめのない独り言を呟いた。小さく。でも誰かに、聞こえるように。それを聞きとめた誰かが僕の隣に座って酒をついでくれるのを期待して。卑劣。僕は煙草を吸いすぎている。