ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

その日


 僕は梨華ちゃんの出演するコンサートに来ていて、開演前にカフェテリアで一人ぼんやりしていた。大学の学食みたいな、味も素っ気もないカフェテリアだった。表情というものを欠いたヲタたちがそこで僕と同じようにぼんやりしていた。そして唐突に目の前のヲタが立ち上がり、「石川さんですよね? 何かおごりますよ」と言った。「石川さんですよね?」
 振り返ると、ヲタにまぎれて梨華ちゃんがいた。全然アイドルのていじゃなかった。退屈な休日の午後にふらっと喫茶店にたちよったOLのていだった。「はい、そうですけど」と梨華ちゃんは答えた。でも梨華ちゃんの目は病的にうつろだった。ものを見ることすらかったるいみたいな感じだった。梨華ちゃんはどうやら、モンテローザで休憩なしの12時間労働をしたあとと同じくらい疲れきっているようだった。その問答によって周りの2、3人のヲタが梨華ちゃんの存在に気付き、梨華ちゃんに言い寄りはじめた。「梨華ちゃんにおごるのは俺だ」「いや、俺だ」「ねえ、石川さん、よかったら今晩飲みにでも・・・」「今日のコンサート楽しみですよ、石川さん、いやほんとに。石川さんの歌唱力およびダンシングは着実にレベルアップしていますね、僕はいつも見てるんです、石川さんの喉ちんこの震えや股関節のきしみにいたるまで、僕はあなたのことを隅々まで観察しているんです。こいつらとは違う。あなたを適切に観察し正当に評価してるのは僕だけなんだ。だからあなたが選ぶべきはこの僕です。今晩飲みにいきましょう」
 梨華ちゃんはそういう誘いを受けても、「ええ、そうね、考えとく」とか「気が向いたらね」とかいう気のない返事をするだけだった。梨華ちゃんはとにかくひどく疲れているようだった。そして私を癒してくれるのはあんたたちなんかじゃないのよとでも言わんばかりだった。私を癒してくれるのは、気持ちの悪いあんたらじゃなくて、もこみちや、小池徹平なのよ。
 僕はそれを一歩引いたところで見てるだけだった。何もできなかった。周りのヲタを押しのけて梨華ちゃんに言い寄るような積極性なんてないし、何を言えば梨華ちゃんの心をつかめるのかもわからないし、そもそも梨華ちゃんが僕なんかを相手にするわけがない。僕はただずっと眺めているだけだった。ヲタがつぎつぎに、誘いの言葉やきどった言葉や知的っぽい言葉や、とにかく下心が貼りついたセリフを投げかけていくのを。


 これが僕の初夢だった。起きた時はすごく鬱になった。でもとりあえず勃起してたので、とりあえずリカニーした。とっても気持ちがよかった。