ファミリー席


 親切な案内係の人に席まで導いてもらい、着席。
 僕の左どなりには一人で来ていると思われる20代なかばの小太りの女性が座っていた。公演中、彼女はときどき思い出したように「ゆうちゃ〜ん」と中途半端な大声で叫んでいた。右どなりには連れと来ているらしい20代前半の男性。サイリウムを持って、最初から最後まで中途半端なテンションでそれをふっていた。


 僕はコンサートに行くといつも、座ったままほとんど動かずにステージを見ている。もちろんファミリー席だ。一般席で観ると、まわりの盛り上がりについていけず、白い目で見られているような気がして、精神的に疲れてしまう。ファミリー席でゆったり座って観るのが、僕には合っている。
 テンションが上がると、頭をゆらゆら左右にゆらしたり、左足をリズムに合わせてピクピクさせたりはするけど、僕は基本的には野鳥の会だ。双眼鏡ばかりのぞいている。だから僕は両どなりの中途半端なノリの人たちですら、天皇陛下バンザーイと叫ぶ右翼の人みたいに感じられて、少し気持ちが縮こまってしまった。