店内


 その後、店が昼休みに入ると、兄に呼び出された。しんとした店の中で、僕は延々と説教された。まさに小一時間だった。僕には悪いことをしたという意識がなかったし、聞く耳なんて持てなかった。ときたま冗談を言って、なんとか場をなごませようと思った。
「お前親が死んだらどうするつもりだ? どうやって生活するんだ?」
「そしたらまあ、保険金がおりるし、遺産も相続できるし、それで生活するよ、のびのびとね」
「はあ? お前なめてんのか?」
「おいおい、冗談ですよ。冗談。本気でそんなこと思ってるわけない。わかるでしょ?」
「お前なあ、冗談を言っていいときと悪いときがあるだろう。今は冗談をいうべきじゃない状況だろうが」
「冗談をいうべきじゃないときに言う冗談が一番面白いんだよ」
「お前の冗談は全然面白くないんだよ」
「これは失礼。次は面白い冗談を言うよ」
「だから、こんなときに冗談を口にするなって言ってんだろうが!」
 兄はいつもは不真面目なのに、人を叱るときだけは真面目だ。とんでもないやつだ。
 それでも僕はめげずに、くだらない冗談を繰り返し言った。兄がついに笑ったのは、この冗談だった。
「お前みたいなやつは、小心者だから、エレベーターに乗ったときでさえ人の目が怖くてビクビク震えているんだろう」
「まあ、そうだね。よくご存知で」
「お前のことなんか全部お見通しなんだよ」
「でも、震えてしまうのは、僕がとても繊細な神経の持ち主だからだよ」
「ぷ。笑わせんなよお前。繊細とか。いいように言ってんじゃねえよ」
 やった。笑ってくれた。ツッコミまでもを引き出せた。でもこんなしょうもない冗談で笑うとはまさか思わなかった。なんて低レベルなんだ。


 まあそんなわけで、冗談のおかげで、最終的にはなごやかな雰囲気になった。僕はにっこり笑って兄と別れた。問題は、何一つ解決してはいないんだけれど。兄は、店を手伝わなければ、僕のことを殴ると言う主張を曲げなかった。


 はっきり言ってうんざりだ。こんな家うんざりだ。なんで日々暴力に怯えて暮らさなければならないんだ。本当に、自殺しちゃいたいよ、梨華ちゃん。好きだよ。梨華ちゃん。大好きなんだ、梨華ちゃんのことが。僕は冗談を言うのが3度の飯と同じくらい好きなんだけど、梨華ちゃんのことは、冗談抜きで大好きだよ。だけど、今日はリカニーができなかった。ちんこが、ずっと縮こまったままなんだ。ピクリともしない。おい、僕のちんこ! どうしちゃったんだい! 元気出して! 梨華ちゃんが好きなんだろ?