モンテローザ


 バイト先の居酒屋につく。周りのひとは、みんな、高度資本主義社会に適応できている人たちだ。社員の人は、「スピードが何よりも大事だ」と言う。僕は、思いやりとか優しさとか、誠実さとかにはそれなりに自信があるけれども、スピード的なものは全く不得意だ。高度資本主義社会には、そういう情緒的なものは一切不要なわけのものらしい。全部、効率主義の、形式的なもので埋めつくされている。しかしながら僕は特にこれといった才能もないわけだから、結局はこういう非人道的な社会の枠の中で生きていくよりほかになく、そう考えると、本当にいやになってくる。


 仕事中に、包丁で指をざっくり切った。血が止まらない。むかし酔った勢いで手首を切ったときよりたくさん血が出た。どう処置していいのかわからなかった。水で流していたら、永遠に血が出そうだった。水をかけるのはやめて、キッチンペーパーで血を止めた。血まみれになった食材はさすがに捨てた。