新年


 を迎えたときは、患部の一人がそれを伝えた。今年初めて耳にした声は、無駄に元気のいい、糞を焼いた香りのするダミ声だった。「田中くん! あけおめ!! ことよろ!!!」死にたいと思った。ひとつもめでたくなかった。めでたいのはお前の頭だけなんじゃねえのかしら。
 梨華ちゃんのことを想ったら、ほとんど絶望的な気持ちになった。梨華ちゃんの住む世界と、僕の生きる世界は、絶望的に高くて致命的に厚い壁によって隔てられているように感じられた。僕はそちら側には決して行けず、こちら側の世界で脳味噌のくさった連中と日々すごしていかなきゃならないんだ。そう思ったら、新年早々自殺したくなった。死ねばあっち側に行けるかもしれない。行きたい。


 朝5時、患部が帰ったあと、店長は憔悴しきっていて、うつろな目をしていた。店長はとても優しい人だ。さしいれにクリスマスケーキを買ってくれたり、僕が先日仮病で休んだ時には「田中くんがいないとなると大変だけど、まあ頑張る。だいじょうぶだよ。ゆっくり休んでね」と言ってくれたりした(涙が出そうになった)。そんな素敵な人がゴキブリのうんこみたいな上司に苦しめられていると思うと、世の中の不条理に対してはらわたが煮えくり返ってくる思いだ。店長みたいな人が、もっと出世するべきなんじゃないか。世の中は間違っている。というか、モンテローザは間違っている。性格が破綻していないと出世できないなんて、どうかしてる。どうせならこのまま経営も破綻すればいいと思う。