踏み絵


 梨華ちゃんの写真集をそこらへんに置いておいたら、うっかり踏んじゃった。
「あっ!」僕はすぐさま飛びのいて、しりもちをついた。
梨華ちゃん、なんでそんなところにいるの?」僕が置いたんだ。
 僕は梨華ちゃんの写真集を拾い上げて顔をなでなでした。
「ごめんね、梨華ちゃんごめんね。痛かった? ほぅら、痛いの痛いの、とんでけ〜! ふっち君にとんでけ〜! あ、イタタタ、顔面イタイよ、飛んできたんだ梨華ちゃんの痛みが。もう痛くないよね梨華ちゃん? 二度と踏んだりしないからね。本当にごめんね・・・」そう言って梨華ちゃんを抱きしめてチューをした。
 僕は自分のことを、とても気色の悪い人間だと思った。


 僕はたとえ、「梨華ちゃんの写真を踏んだら1億円あげるよ」って言われても踏まないと思う。写真とはいえ、梨華ちゃんなんだから。魂が宿っているんだ。声が聞こえるんだ。「痛い」って声が。今日だって聞こえたんだ。幻聴かもしれないけど。


 でもよく考えたら、僕は梨華ちゃんの写真にぶっかけていることに気付いた。10回以上かけたことがある。なんていうことだろうか。これは踏むよりももっとひどいことなんじゃないか。いくら謝っても取り返しのつかないことなんじゃないか。踏むのと、ぶっかけるのって、どっちが罪重いのかな。やっぱりかけるほうがエゲツナイよな。僕は死んだほうがいいのじゃないかしら。ごめんなさい、僕は梨華ちゃんを汚しました。決定的に。鬼畜です。そして、また近いうちにかけてしまいそうなんだ。たまに酒飲んだりしてテンションあがると、やけくそになって、梨華ちゃんの顔にサランラップ敷いちゃうんだ。なんか今日はまさにそんな雰囲気だ。やりそうだ。誰か僕を止めてくれ。僕の手からドラフトワンを奪い去るか、僕の性器を切断するか、いっそ僕を刺して殺してくれ。梨華ちゃんがかわいそうだ!