その55 ファンの集いで、短冊が読み上げられる

 昼食の後、16時くらいからファンの集いが催されました。会場に入ると、ステージのところに大きな笹が2本立っていました。笹には、ファンのみんなが書かされた短冊がたくさんぶら下がっていました。僕は自分の書いた短冊を探しました。しかし、いくら探しても見当たらない。僕が短冊に書いた内容が不適切だったのだろうか、と心配になりました。いや、そんなに不適切ではないだろう。だって、「さいきん二日酔いがつらいです。梨華ちゃんと同じくらい酒が強くなれますように」という毒にも薬にもならないような短冊だぜ。これで不適切だったら、ほとんど全ての短冊が不適切なものになってしまうんじゃないか?

 自分の短冊を半ば必死に探していると、不適切の対極にあるような短冊を見つけました。「梨華ちゃんが素敵な王子様と出会ってもっともっと幸せになれますように」。僕の心は、何故だか激しく震えました。さまざまな理由の入り混じった複雑な涙が、目にあふれてきました。視界がぼやけて、自分の短冊を探すのが困難になりました。僕はこんな風な心温まる願い事は書けないし、梨華ちゃんをもっともっと幸せにできるような素敵な王子様になることもできない。そう思って、さらに視界がぼやけました。でもこのタイミングで泣いてるのも不自然なので、涙が出てこないように努力しました。

 笹にぶらさがっている短冊を読み上げて願いを叶えていく、というコーナーがあり、梨華ちゃんは、スタッフによって適切とみなされた短冊たちを読み上げていきました。その中に、「梨華ちゃんに告白されたい」という願い事があり、ヲタたちは口々に「阻止!」「阻止!」と叫びました。僕は心の中で「ふざけんな!」と叫びました。梨華ちゃんはキョトンとした表情で、「え? むし? そし?」と言っていて面白かったです。そして、その「梨華ちゃんに告白されたい」という願い事は、ヲタたちによって見事に阻止されました。その勢いで、梨華ちゃんが某プロ野球選手と付き合うのも阻止してほしかったです。

 「梨華ちゃんと“あっち向いてホイ”をしたい」などの願いは叶えられることが許され、梨華ちゃんとヲタが1対1で“あっち向いてホイ”をする場面もありました。叶えられそうな願い事だけ叶えられるというのは、七夕としていかがなものか、という気持ちになりました。また、「梨華ちゃんに告白されたい」というふざけた願い事より不適切とみなされた僕の願い事って一体…、と思いました。

 「梨華ちゃんの願い事が叶いますように」と書かれた短冊があり、「そうそう、こういうのよ〜」と梨華ちゃんはご満悦の表情を浮かべました。僕はその表情を見つめながら、「あー、そっかー、ロマンチックの方だったか〜。ロマンチックの方にしとけばよかったな〜! なんで『最近二日酔いがつらいです』とか書いちゃったんだろう。僕のバカ!」と思いました。