僕はモーニング娘。のイベント会場に来ていた。
立食パーティーよろしく、モー娘と自由に触れ合うことが出来るイベントだった。
僕の目の前、1メートルくらいのところに、梨華ちゃんが居た。
フォトコピー大使の格好をしていた。
いつものように、メンバーにいじられ、からかわれ、
身をくねくねさせて、「なによもう〜」なんて言って笑っていた。
僕は、
「え? なにこれ? すごくない? ありえれいなくない?
自由なのこれ? なんでこんなに近いし、自由なの? いいの?
ああ、すばらしきかな、自由とは! フリーダム!」
って思って、感動して、立ちすくんでいた。
それから、2列に並べられた椅子に座り、モーニング娘。が戯れている姿を眺めた。
僕のまわりには、モーニング娘。研究会の面々が座っていた。
僕のうしろには、くろぼんさんがいた。
僕の右隣には、たかぎさんが座っていた。
僕はたかぎさんに向かって、
「ねえ、これ、夢じゃないよね? 夢じゃないよね?」と話しかけた。
たかぎさんは、
「夢なわけないよ。何言ってるの。ほら、こんなにありありとしているじゃないか」
「そうだよね。こんなにリアルなのに、夢なわけないよね。
すげー、マジなんだ、これ。夢じゃないんだ。現実なんだこれ。紛れもないんだ。
梨華ちゃんと、いくらでも握手できるし、いくらでも話ができるんだ。
サインだってもらえる。ああ、夢じゃない。なんて素晴らしい現実だろうか!」
しかして、夢でした。
あんなに現実のように思えたのに、夢でないことを、確かに確認したはずなのに、
たかぎさんだって、「夢じゃない」って言ってくれたのに、
なんで夢なんだ? どういうことなんですか?
今は、じゃあ、本当に現実なのか?
何が現実で何が夢かなんて、誰が言い切れるの?
いつか、この現実と思っているものも、目が覚めたら、
夢だったんだって気付くのかもしれない。
だとしたら僕はいったい、どこの世界の住人なんだ?
僕はいったい誰でありうるんだ?
もう、何もかも信用できない。