心象スケッチ

 友達のY君があやしげな動画を持っていて、それをみんなで見ることになった。画面の中の保田さんはベッドに寝ていた。それを観て、画面の外の保田さんは、「私には何もやましいところはないわよ」と言った。そのあとカメラが移動して、これまたベッドの上にいる、化粧のくずれた女性の顔が大写しになった。誰だろうこの小汚い女は、と思ってよく見たら、それは梨華ちゃんだった。ひどく不機嫌そうな顔をしていた。「これは、梨華ちゃんじゃないか」と僕はなぜか笑いながら言った。誰か男の声がしたが、それはもごもごとしてて聞き取れなかった。梨華ちゃんはより不愉快そうな顔になり、「どうしてTシャツを、そうやって捲くりあげてるの? どうしてあなたはTシャツを脱ごうとしてるの? 何するつもりなのよ。ふざけないでよ、何考えてるのよ。そんな気は私にはないって言ってるのよ」と言って、さらに男の声がもごもごと聞こえ、梨華ちゃんはほとんど怒鳴るような感じで、「仕事ではそういう風に演じてるのよ。それだけのことなのよ。わたしがいつだってそんな感じだと思ったら大間違いなのよ。ふざけないでよ、なんで脱ごうとするのよ。さわらないでよ!」と言うと、男のくぐもった声がし、オレンジ色のあじさいが梨華ちゃんの胸元にさしこまれた。梨華ちゃんはそれを見下ろし、「こんなもので私の機嫌をとろうとしても、無駄なんだからね」と言った。それから「こういち、こういちは、連絡くれなかったじゃない、あのとき。どうしてよ、私、待ってたんだからね」と梨華ちゃんが言い、僕はなぜか笑いながら、「こういちっていう奴はバカだね、ふざけた野郎だね、どうしようもないぜこいつ。バカやろうだ。梨華ちゃんをこんなに怒らせるなんてろくでも――」Y君はいなくなっていた。保田さんもいなくなっていた。僕は腹をかかえて部屋をころげまわり、クローゼットにぶつかると、その扉を殴りつけた。笑いながら何度も殴りつけた。気がつくと画面には矢口さんがうつっていて、気味の悪い声からインタビューを受けていた。背景は安っぽく、どう考えてもAVだった。矢口さんならありうる、やりかねないと思って、そんなには驚かなかった。矢口さんはモー娘たちの性事情について問われて、「うーん、そうですね、そうそう、梨華ちゃんなんかは、やっぱりまだ処女だと思いますね」と言った。僕はそれを聞いてとても喜んだ。よかった、梨華ちゃんはまだ処女なんだ。それから矢口さんはたくましい男と凄絶にまじわった。