梨華ちゃんおめでとう!

バースデーカード

 モー娘は終わったなんて言われてるみたいだけど、終わりでいいじゃん。モー娘を終わりにして、もういちどモー娘を始めればいいじゃん。僕は絶対見捨てたりしないよ。だから終わることを恐れるな。一からやり直すことを恐れるな。
 そして梨華ちゃん、23歳のお誕生日おめでとう! 大好きです。好きすぎてまぶたが剥がれそう。梨華ちゃんのお誕生日は、僕の誕生日より五十万倍くらい嬉しいです。毎日が梨華ちゃんのお誕生日だったら、僕の人生はどれだけ幸福になることやら。そしたら梨華ちゃんはすぐにおばあちゃんになってしまうけど、そんなの関係ねえ! オッパッピー! おばあちゃんになった梨華ちゃんのことこそ僕は大好きなんだ。いろいろな梨華ちゃんのうち、おばあちゃんな梨華ちゃんが一番好きだよ。いろいろな梨華ちゃんのうち、23歳の梨華ちゃんが最も好きだよ。えへへ、梨華ちゃん。好きだよ……。23歳の梨華ちゃんはなんて素敵なんだろう。まだ見てないけれど、きっと素敵なんだろうなあ。23歳の梨華ちゃんをペロンチョしたい。ああ梨華ちゃん! 誕生日だというのに、こんなことを言ってしまってごめんなさい。けれど僕は自分に嘘をつくことはできない。僕は今すぐに梨華ちゃんをペロンチョしたい。梨華ちゃんのことを死ぬほど愛していると同時に、梨華ちゃんをペロンチョしたいんだ。梨華ちゃん、23歳の誕生日おめでとう! まだまだ若いね! これからも心の底から応援してます! 梨華ちゃん大好き! ハッピバースデーディアりかりん♪ ハッピバースデーテューユー! ぱちぱちぱち。おめでとー梨華ちゃん! パーン! パーン!(クラッカーの音)そして「梨華ちゃん、誕生日おめでとう!」と僕は言った。
 「ふちりん、ありがとう」と梨華ちゃんは言った。
 「梨華ちゃん、23歳だね」
 「うん、そうなの」
 「23歳おめでとう!」
 「ふちりん、ありがとう」
 「梨華ちゃん、ケーキ食べようよ」
 僕は冷蔵庫から不二家の箱を取り出す。箱からケーキを出す。
 「どうだい梨華ちゃん、グレイトでおしゃれなケーキでしょ」と僕は得意気に言った。
 「うん、とっても素敵だわ。あっ、チョコで『梨華ちゃん』って書いてあるね。えへへ、うれしいな」
 梨華ちゃんは自分の髪の毛を30本くらいつまんで、少しねじりながら軽く引っぱった。
 僕は梨華ちゃんを見ながら、「あのね梨華ちゃん、店員さんに、名前は入れますかって訊かれてね、あの、あの、梨華、梨華ちゃんでお願いしますって言ったの。そしたら店員さんが、え、なんですって?って言うの。だからまた、梨華、梨華ちゃんでお願いしますって言ったの。店員さんが、『ローマ字ですか、漢字ですか、それともひらがなですか』って言った。漢字をお願いした。すると店員は『どのような漢字ですか』と尋ねた。僕は『果物の梨と、華々しいの華です。忘れずに“ちゃん”をつけてください』と答えた。店員は『華ってどうやって書くんでしたっけ。ちょっとここに書いてもらえますか』『ええ、いいですよ。……こうです』『なるほど、わかりました』と店員さんが」
 「いいから食べようよ、ふちりん。よーし、ろうそく消すぞおー」
 「だーめ、僕が消すんだから」と僕が言うと、
 「なんでやねん!」と梨華ちゃんがするどく突っ込んだ。
 「冗談だよーん。梨華ちゃんが消して!」
 僕はケーキのろうそくに火をつけて、部屋の明かりを消した。梨華ちゃんの顔がほのかな明かりに照らされ、幻想的にきれいだ。
 「じゃあ唄うよ! さっきも唄ったけど、もう一回」と僕は言って、唄った。「ハッピバースデーディアりかり〜ん♪ ハッピバースデートゥーユゥゥ♪」
 僕は手を叩いた。ぱちぱちぱち。
 梨華ちゃんはほっぺを膨らませて「ふー!」とやった。ろうそくは3回目の「ふー!」で全部消えた。
 「おー消えたあ!」と僕は言って手を叩いた。ぱちぱちぱち。
 「……真っ暗になっちゃったね」と、しんみりした声色で梨華ちゃんが言った。
 「りかりん……」と僕が言った。
 「ふちりん……」と梨華ちゃんが切なげに言った。
 僕は「チュッ」と暗闇の梨華ちゃんにキスをした。ペロンチョもできそうな雰囲気だった。けれどペロンチョはせずに、「梨華ちゃん、好きだよ。誕生日おめでとう」とだけ言って部屋の明かりをつけた。