FLASH

アンナ・カレーニナ〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

 年賀状とサイフを持って家を出た。「いい天気だな。外って結構気持ちいいんだな」と思った。ポストに年賀状を投函した。FLASHアンナ・カレーニナの3巻を買うつもりで、そこから本屋に行った。文庫本コーナーでアンナ・カレーニナの3巻を探した。しかし全4巻のうち3巻だけなかった。
 「ふざけんなよ。なんで3巻だけないんだよ。1週間前に来たときも3巻だけなかったじゃねーかよ。なんでまだ3巻を仕入れてないんだよ。FLASHと一緒にアンナ・カレーニナを買うことによって、自分はFLASH読むだけのキモヲタじゃないんだということをアピールしたかったのに、なんてことだ……なんて……」
 成人向けの雑誌のコーナーに行った。エロ本に囲まれてFLASHが置いてあった。FLASHを手に取った。「史上最大SEXY 豊満柔肌」という見出しが表の右上に載っていた。「豊満柔肌って何だよ。梨華ちゃんをそういういやらしい形容詞で語らないでくれよ。梨華ちゃんはなあ、梨華ちゃんはなあ! 清純派なんだよ。今世紀最後の清純派アイドルなんだよ。そうやって簡単に汚していいような安い女じゃないんだよ。それに何なの? 何で梨華ちゃんの名前の真下に“ハメ撮り画像流出”とか書いてあるの? わざとなの? 偶然そうなったのならしぶしぶ許すけど、もしわざとだったら断じて許さないぞ。ビルにガソリンをかけて火をつけてやるからな!」表をめくってみると、いきなり梨華ちゃんのグラビアが立ち現われた。「ぬお! りかりん! まったくもう、いきなり現われるからびっくりしたじゃない! はうぅ、おっぱいがすごいなあ。めっちゃプックリしてるやん……。豊胸疑惑を抱かざるえないほどのプックリぶりやん……。でも僕は、シリコンごと梨華ちゃんのおっぱいを愛そうと思っているよ。だから安心してね……」石川梨華という名前の横には、“ハワイに恋して”という文字が書いてあった。「“ハワイに恋して”か……。何をかくそう、僕は梨華ちゃんに恋をしているよ。それも燃えるような恋をね。こうやって梨華ちゃんの写真を見ているとね、僕の心臓はものすごく熱くなるんだ。ああ、熱気でメガネが曇ってきてしまった」僕は一通りグラビアを見ると、メガネを曇らせたままそれをレジに持って行った。

 家に帰るとすぐにトイレに行った。「はうううん! なんて可愛いんだろう……なんて……。梨華ちゃんが僕のお嫁さんになってくれたらなあ。なってくれたらなあ! なってくれたらなあ! でも、僕はこんなことを言ってるばっかりで、何にもしてないや。なんでかなあ。なんで何もしないんだろう。こうやってリカニーをするくらいのことしかしてない……。このままじゃ、誰かに梨華ちゃんを取られちゃうぞ。そんなのやだ! 絶対やだ! なんとかしなきゃ! なんとかしなきゃ! あっ、梨華ちゃん、好きだよ! あっ! あっ!」