ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

石川梨華カジュアルディナーショー〜It's a RIKA time vol.5〜日記その6

 店員さんは空いたお皿を見つけると下げに来ました。その際、僕は店員さんにいちいち「ありがとうございます」と微笑を浮かべて言いました。梨華ちゃんのファンは礼儀正しい素敵な人だ、という印象をお店の人に与えたかったからです。しかし店員さんは微笑みを返すこともなく、淡々と業務を行っていました。僕も店員さんもロボットなのかもしれない、と思いました。ロボの微笑と、ロボの労働。ロボロボ。
 赤みを帯びた柔らかそうな牛肉に、じゃがいもが揉まれたような感じのやつが添えられたものが出てきました。今日のメインディッシュです。牛肉は噛むとすぐに形をなくして舌の上でとろけていき、とても美味でした。じゃがいもは普通でした。

 梨華ちゃんのショーが始まる時間の午後7時が近づいてきたため、下腹を右の手のひらで深く押し込み、尿意の予兆を探りました。予兆はかすかに感じられました。それは都心の夜の月光のようにかすかなものでしたが、念のため僕はふたたびトイレに行きました。
 席に戻ると、僕の席の隣は未だに空席でした。食器はしっかりと用意されているものの、人間が来ません。2人がけのテーブルだったから、もし誰かが来たら、僕はバーメイドカフェで磨いたコミュ力を発揮して「こんばんは。今日は楽しみましょうね」と声をかけ、「いつから梨華ちゃんが好きなんですか?」などと楽しく梨華ちゃんトークをしようと思っていたのだが、なかなかやってきません。このディナーショーには落選が出ているくらいだから、そこには人が来るはずでした。よほど重大な急用ができたのだろうな。僕が梨華ちゃんより優先する用事があるとしたら、いったい何だろう。仕事で呼び出されても無視するだろうし、親の死に目くらいかもしれない、と思っていたら、梨華ちゃんの特製ドリンクと、デザートのケーキ、コーヒーが運ばれてきました。


 僕はさっきまでと同様、梨華ちゃんファンのイメージを良くするために「ありがとうございます」と言って微笑みを浮かべました。身体がやや火照っていたのでお冷を頼むと、店員のお兄さんは「こんな忙しいときに水なんか頼むなよな」とでも言いたげな不満そうな顔で僕を見つめ、しかし「はい」と答えて食器を持っていきましたが、一向に水を持ってくる気配がない。まあ忙しいんだからしょうがないよな、と思いつつも、このお店の店員さんに対してやや不信感を抱いてしまいました。でも僕は長谷部選手のおかげで心が整っていたため、その感情を表に出すことはありませんでした。

 ミュージックレストラン『ラ・ドンナ』の店内の右手の壁には大きな液晶テレビが掛かっており、そこには題名のわからないお洒落そうな西洋の映画が流れていました。その画面の中で、裸の西洋人の男女がベッドのシーツにくるまって何やら語り合っているのが見え、不安な気持ちになりました。あなたたち、いやらしいことはやめたまえ。服を着たまえ。僕は今、いやらしいことなんて考えたくないんだ。僕の心を乱そうとしないでくれたまえ。いやらしいことなんて抜きで、梨華ちゃんと向き合いたいんだ。始めはそう思いましたが、「でも、もしかしたら、いやらしいことも含めて梨華ちゃんに向き合うのでなければ、本当に向き合ったことにはならないのではないだろうか」という気持ちが頭をもたげてきて、僕は混乱しはじめました。しかしそこでまたサッカー日本代表の長谷部選手が頭の中に現れ、「今は、なかなか答えの出ないようなことを考えるときではない。いま自分にできることだけを考えろ。難しいことは後回しでいいんだ。心を整えなさい」と実直そうな声で喋りました。その声は身体のすみずみまで行き渡り、混乱しはじめていた僕の心は再び整いを得ました。