その51 アイスクリーム作り体験

 100名弱のヲタたちとのグループトークを終えた梨華ちゃんが、アイスクリームを作るための部屋にやってきました。朝っぱらから、100名弱ものヲタたちと長時間トークするというのは、かなりの苦行というか、すごく疲れるだろうと思うけど、梨華ちゃんは疲れたような顔一つ見せず、にこにこと現われました。アイス作りの先生みたいな人も、ほぼ同時に部屋に入ってきました。

 梨華ちゃんはアイス部屋の前方左のテーブルに座りました。僕のいるテーブルは部屋の右後方にあったので、梨華ちゃんからは一番遠かったです。グループトークの時は梨華ちゃんから一番近かった(隣だった)けど、今では一番遠いなんて、世の中はうまい具合にできているのだなあ、と思いました。

 アイス作りの先生(元気のいいおばちゃん)は、「アイスをつくるにあたって、それぞれのテーブルごとにリーダーを決めます」と言いました。さらに、「私はこういうとき、そのテーブルで一番イケメンの人をリーダーに指名しています。だから石川さんにもそうしてもらおうかと思うんだけど」と続けると、梨華ちゃんは間髪入れずに断乎とした態度で「選びません!」と断りました。先生はやや狼狽しながら、「石川さんにとって、一人一人が同じくらい大切なファンだものね。そりゃ選べないわよね」と言った。

 こういう場合、先生に言われるがまま、面白半分で「じゃああなたがリーダーね!」と指名して回るアイドルは、結構いそうな気がするけど、梨華ちゃんはそうではありませんでした。「アイドルとしての確固とした哲学がきっとあるのだろう。なんて素晴らしいアイドルなんだろう」と感銘を受けて、梨華ちゃんのことがますます好きになりました。アイス作りのことなんて、どうでもよくなりました(もともとどうでもよかったが、さらにどうでもよくなった)。僕は、遠くの方で熱心に可愛らしくアイスを作っている梨華ちゃんをうっとりと見つめながら、漫然とアイスを作っていきました。ただ、アイスをかき混ぜる段階では、一時的にかなりやる気を出しました。