その52 アイスクリームを作りながら梨華ちゃんの名を叫ぶ

 この写真の建物の2階で、我々はアイスクリーム作り体験をしました。7〜8人がいるテーブルごとにアイス作りをするわけだけど、作業に必要とされる人数はだいたい4〜5人なので、残りの2〜3人は何も仕事がないという状況に陥りました。僕の目の前には、アイス作りのための巨大なボウルが置かれていたので、不可避的に仕事をすることになり、幸運でした。コテージで同室だった出口さん(初老)は、テーブルの端に座っていたため、アイス作りに関わることは一切なく、出来上がったアイスを食べるだけでした。出口さん(初老)は、アイス作りに精を出している我々や、遠くの梨華ちゃんを見つめながら、微笑を浮かべていました。

 不可避的に仕事を割りふられる席にいた僕は、アイスをかきまぜる重労働の担い手にすらなりました。それでも、「出口さん(初老)のような状況になるのはつらすぎるから、仕事がないよりはましだ」と思いました。バイト先で、暇すぎて仕事がないよりは、ある程度いそがしい方がいいのと同じことです。

 アイス作りの先生(おばちゃん)は、「『梨華ちゃん可愛い! 梨華ちゃん素敵!』と20回さけび終わるくらいの間、アイスをかき混ぜてください」と指示しました。それを受けて、100名弱のヲタは一斉に、「梨華ちゃん可愛い! 梨華ちゃん素敵!」と叫びながら、アイスをかきまぜ始めました。僕も「梨華ちゃん可愛い! 梨華ちゃん素敵!」と言いましたが、叫ぶまではいかなかった。ささやき声より少し大きめ、という程度でした。僕の目の前のヲタは、仕事で鍛えられてる感じのすごい大声で「梨華ちゃん可愛い! 梨華ちゃん素敵!」と、梨華ちゃんを背にしながら叫んでおり、「男らしいなあ! こういう人の方が、梨華ちゃんに好かれるのかもしれない」と思いました。

 しばらくすると、一部のヲタが「梨華ちゃん最高! 梨華ヲタ最高!」と、叫びをアレンジしました。それが次第に伝播していく。「梨華ちゃんは間違いなく最高だけど、梨華ヲタってそんなに最高か?」という疑問はありましたが、声を出しながらアイスをかきまぜているうちに僕もだんだんテンションが上がってきて、「梨華ちゃん最高! 梨華ヲタ最高!」と叫びはじめました。それでもやはり、「梨華ヲタ最高!ということは、僕も最高ということになるけど、それでもよろしいのか?」という疑念は心の中にありました。梨華ちゃんは、それらの叫びを聞きながら苦笑いしており、可愛かったです(もうなんでも可愛い)。

 アイスクリーム作りを終えた我々が建物の外に出ると、バスの添乗員さんが出迎えてくれました。「みなさんの叫び声が、建物の外にすごく漏れて、牧場中に響き渡っていたから、通りがかりの人たちが、いったい何事かと振り返っていましたよ(笑)」と添乗員さんは語りました。