その62 梨華ちゃんがお見送りしてくれて、2ショット写真が配られる

 バスが出発しようとするとき、梨華ちゃんの姿が遠くに見えました。すると、一部のヲタがバスの窓から身を半分ほど乗り出し、添乗員さんに注意されました。僕がそのとき注目していた小太りのヲタは、放っておいたら窓から落ちてしまいそうなくらい身を乗り出していたので、気が気でなかったです。あの体勢と体重でこの大きなバスの窓から落ちたら、あるいは死んでしまうかもしれない。

 バスはUターンするような形で、梨華ちゃんのいる歩道の前を2回通りました。確かそうだったと思う。どっちが先でどっちが後だったかは覚えていないけど、僕のいるバス左側も、梨華ちゃんの目の前を通りました。通路側の席だった僕は、阿久津さん(仮名)の肩ごしに梨華ちゃんへ手を振りました。その時の僕はすごく笑顔だったと思う。梨華ちゃんもすごく笑顔でした。ヲタに対する好意と感謝からくる笑顔であると同時に、長く辛かった仕事がもうすぐ終わるという喜びと安堵からくる笑顔でもあったと思われます。いずれにせよ、夏の太陽の光を受けながら笑顔で手を振っている梨華ちゃんはとてもとっても可愛くて、僕はいつまでも見ていたかった。でも梨華ちゃんの姿はどんどん小さくなっていった。そして見えなくなった。僕は身を乗り出すのをやめて、バスの座席に深く座り、長く大きく息を吐き、目を閉じた。しかし心臓のドキドキは、しばらく鎮まることがなかった。時間が巻き戻ることはないことを象徴するかのように、窓の外の風景はどんどん流れていった。

 現像された梨華ちゃんとの2ショット写真が、バスの添乗員さんによって配られました。その写真には、梨華ちゃんのありのままの美しさと、僕のありのままの醜さが写し出されていました。写真とは残酷だ。僕の近くにいたヲタも、「梨華ちゃんは自分だけ可愛く写りやがってさあ!(笑)」とぼやいていました。カメラマンが「口を開けて笑ってくださーい」みたいなことを言うから、僕の口が奇妙に開いている。緊張で笑顔になれないまま口が奇妙に開いているので、意味のよくわからない表情である。

 「梨華ちゃんとの2ショット写真は、イケメンに撮れていたらネットにアップしよう。そうじゃなかったからやめておこう。あるいは加工してアップしよう」と思っていたけど、結局このようにそのままアップしました。今となっては、「イケメンだろうが何だろうがどうだっていいや。どうせ梨華ちゃんにはステディーな彼氏がいるんだし」というやけくそな気持ちです。

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*1:この可愛い封筒に2ショット写真が入っていました。