ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

僕の恋愛遍歴

 終戦記念日だし、僕の恋愛遍歴でも書き記しておこうかな。


 はつ恋。と言えばツルゲーネフだけど、僕の初恋は16歳のときじゃなく、7歳のときだった。小学1年生。同じクラスの女の子を好きになった。幽霊みたいな女の子だった。色が白くて、線が細く、つねにふらふら歩いていた。名前は、白井とか、そんな感じの名前だった。顔はよく覚えてないけど、たしか幸が薄そうな顔をしていた。母親に、「僕ね、好きな人ができたんだ、白井さんだよ」とか言ったのを覚えている。でも2年生になったら白井さんのことなんてどうでもよくなった。


 2度目の恋。小学3年生のとき、水戸から浦和に引っ越した。転校初日に、同じクラスの女の子を好きになった。服部さんだった。ドラミちゃんに似ていた。かわいくなかったし、はっきり言って魅力的なところは一つもなかったけど、なぜか惚れた。家に帰ると、「服部さん、僕は君を幸せにするよ」と呟いたりしていた。でも4年生になったら、服部さんのことなんてどうでもよくなった。


 3度目の恋。小学5年生のとき、配島さんを好きになった。運動神経抜群で、整った顔をしていた。でもどこかロボットみたいなところがあった。感情表現が機械的だった。僕はヒエラルキー的に底辺の人間だったから(えたひにん的存在だった)、配島さんは高嶺の花もいいとこだった。絶対振り向くはずはなかった。でも好きだった。配島さんの赤いランドセルの中に手を入れようとして、執拗に追い掛け回したことがあった。あれは何だったんだろう。僕は何をしたかったんだろう。配島さんとの思い出はそれだけ。話したことなんて全然なかった。追い掛け回しただけ。そして6年生になったら、配島さんのことなんてどうでもよくなった。


 4度目の恋。中学1年のとき、奥村さんを好きになった。おとなしくて、幸が薄かった。でもすごくかわいかった。繊細なかわいさがあった。掃除の時間に、少し会話をしたのを覚えている。奥村さんと話したのはそれが最初で最後だった。「掃除、めんどくさいね」っていうくらいの会話。奥村さんは少しだけ笑った。今にも消えてしまいそうな、輪郭のあやふやな笑顔だった。青いジャージがよく似合っていた。奥村さんは誰にも注目されてなかったけど、僕はすごく魅力的だと思ったし、好きだった。でも、中2になったら奥村さんのことなんてどうでもよくなった。


 5度目の恋。中学2年のとき、「家なき子」を見て、安達祐実を好きになった。ポスターを部屋に3枚貼った。写真集を買った。CDも買った。ファンレターも30通くらい出した。でも祐実ニーはしなかった。当時僕は、本気で祐実ちゃんと結婚したいと思っていた。祐実ちゃんの処女を奪うのは僕でなければならないと思っていた。「死ぬ時は一緒だ」と言って祐実ちゃんの手を握っていたつよポンの相方には、少なからず嫉妬していた。でも中3になったら、安達祐実なんてどうでもよくなった。おどろくほど急激に熱が冷めた。


 6度目の恋。中学3年のとき、尾形さんを好きになった。安達祐実に冷めたのは、尾形さんに恋をしたからだった。尾形さんは不良だった。中学生なのに茶髪だった。だけど僕には優しかった。うだつのあがらない僕によく話しかけてくれた。いじめっ子から守ってさえくれた。「ふっち君に手出したら許さないよ」って。うれしかった。惚れるだろう、こんなの。おっぱい大きかったし。大きかったんだよ。Cカップはあった。しかも柔らかそうだった。でも僕はそのおっぱいに触ることはできなかった。中学を卒業するときに、彼女は「ばいばい、ふっち君」とだけ言った。僕は卒業式が終わったあと、教室に一人残って、尾形さんの机に座った。机の中をまさぐったら、音楽の教科書があった。僕はそれを盗み、家に持ち帰った。尾形さんの字で、尾形○○と、名前が書いてあった。不良なのに綺麗な字だった。卒業したあとも、しばらく尾形さんのことが好きだった。でも高校に入って半年もたつと、尾形さんのことなんてどうでもよくなった。


 7度目の恋。高校3年のとき、大山先生を好きになった。レポートの通信欄に、僕は色々なことを書いた。大山先生は丁寧な返事を添えて返してくれた。
「誰が何と言おうと僕は先生の声が好きです。シビレます。感動的ですらある。涙が出るほどに」
「うれしいです。でもなんか気恥ずかしいなあ・・・」
「先生の生年月日を教えてください。そしたらその日になった時、先生の事を思い出せるかもしれません」
「昭和42年8月6日です。『ハムの日』と覚えましょう」
「はっきり言って僕は大山先生が好きです。先生みたいな良い先生はいません。先生みたいな先生になりたいです。というのはウソですが、先生を好きなのは本当ですとも。だっていい人だもの」
「すごくうれしいです! でもそんなにホメられるとそうでない面もあるのさと言いたくなる。学校では『いい人』でいたいし、いさせてくれるみんなが好きです」
 先生は本当にかわいかった。ぽっちゃりしていたけど、焼きたてのパンのような暖かい太り方をしていた。その声はまるでシャボン玉のようだった。ふんわりとしているけどすぐに割れてしまいそうな儚げな声だった。僕は本当に恋をしていて、レポートの通信欄だけじゃ飽き足らず、個人的に手紙を出したりもした。
 でも学校で大山先生を見かけると、話しかけることができず、早歩きで逃げた。
 僕が高校4年になると(留年した)、大山先生は産休のために学校に来なくなった。しばらくして、先生から、子供が生まれたという手紙が来た。僕はおめでとうございますという返事を、泣きながら書いた。僕は大山先生が好きだった。でも先生には旦那がいたし、子供もいた。僕は受験勉強に没頭した。そして、受験日が近づいてくると、先生のことなんかどうでもよくなった。じつにあっさりと。


 8度目の恋。大学1年のとき、嶋村さん(仮名)を好きになった。授業が同じで、僕に明るく話しかけてくれた。少しぽっちゃりしていたけど、大黒様みたいな微笑ましい太り方だった。大阪弁がじつにかわいらしかった。顔も可愛かった。モー娘の小川と同じくらい可愛かった。
「わたし関西から来たんやけど、ふとし君は? 大宮なんか、なんや都会人やねんなあ」
 僕は嶋村さんに心底惚れてしまって、夜も眠れないほどだった。嶋村さんが彼女だったらどんなに幸せなんだろうかと思った。だけど、友達が「俺、嶋村さんのこと好きなんだよ」って言うから、僕は身を引くことにした。実にあっさりと諦めた。僕はそんなに好きじゃなかったのかもしれない。そして大学2年になるころには、嶋村さんのことなんてどうでもよくなった。友達としては今でも好きだけれど。


 9度目の恋。やっとだな。大学3年の冬、梨華ちゃんを好きになった。だいぶ前から好きだったけど、この頃に本格的に恋をした。そして今も恋してる。すごい好き。死ぬほど好き。なんで好きなのかはよくわからない。でもこれから先もずっと好きでいたい。好きでいなければならないと思う。もうこれ以上の恋なんて必要ないだろう? 9回も恋してんだ。そろそろ実ってもいいころだ。梨華ちゃんにおいて結実するべきだ。梨華ちゃんと結婚したい。本気でそう思っている。もう嫌なんだよ。どうでもよくなるのは金輪際お断りしたいんだよ。こんなに好きになっておきながら、「梨華ちゃんのことなんてどうでもよくなった」なんて言っちゃいけないんだ。言いたくないんだ。だけど、言いたくなくても、いつかは言ってしまうんだろうな。おそらく100%の確率で。不可避的に。


 大学を卒業したら、梨華ちゃんのことなんてどうでもよくなった。おどろくほどあっさりと。


 10度目の恋。僕は○○ちゃんを好きになった。