住民基本台帳カード


 午後4時すぎ、役所につく。住基カード申請書の空欄をうめる。軽々と埋まった。これが試験だったら、100点すぎるほどの100点だ。行政書士試験もこれくらい簡単だったらよかったのに。ちくしょう。2年連続で落ちるなんて。片や18歳で一発で受かる人だっているのに・・・。まあいい、そんなことはいい。終わったことだ。過去のことはきれいさっぱり忘れよう。行書のことも桜子のことも忘れ、これからのことを考えるべきだ。ディナーショーのことを。
 ひし形の顔をした職員に僕はたずねる。
「すいません、住基カード、今週中に発行できますか?」
「え? 今週中? う〜ん」
 職員が声を波形にしてうなっている間、僕はそのひし形の顔を見つめる。一塁を蹴って二塁へ向かう。まだだ。もっと先へいける。僕は三塁を目指す。そして思い切ってホームへと突っ走る。あのアゴだ。梨華ちゃんほどじゃないがそれなりにとがったアゴの先へ僕はヘッドスライディングをする。セーフなのか、アウトなのか。どっちだ。
「微妙ですね。きわどいです。間に合うかもしれないし、間に合わないかもしれない。確認の書類をそちらに郵送するんですが、それが金曜までに届くかどうかってところですね。なにしろ郵便だから、確かなことは言えない。いずれにせよ、それをこちらに持ってきていただければ、すぐに発行はできます」
 おいおい。勘弁してくれよ。って言いそうになった。おいおい。勘弁してくれよ。間に合わなかったら、ファンの集いに続いてディナーショーにもいけないってわけか。いずれも身分証明書がらみの理由で。なんだよそれ。僕ってやつはさあ、なんでいつもぎりぎりになって行動起こすんだよ。それで間に合うならいい。でも大体において間に合わないんだからうんざりする。どんだけまぬけなんだよ。まぬけなのは顔だけにしてくれよふっち君。頼むから。前回は4000円だったからまあいいけど、こんどは14000円だぜ。もう払ってあるのに・・・。金の問題だけじゃない。梨華ちゃんのおっぱいだってうっかり触れるかもしれないイベントなんだぜ。行きたくないって気持ちもあるけど、やっぱり行きたいよ。今まで全力で駆けてきたじゃないか。曲りなりにもさ。ここにきてアウトとか、マジで勘弁してほしいんだ。「なあ、セーフだろ? セーフって言ってくれよ!」と、職員のアゴのあたりに向かって問いかける。でも確かな返事はない。アウトとも、セーフとも言わない。聞こえるのはただ、「微妙ですね」それだけ。