温泉と鬱病

 湯河原の温泉へ向かう。山を登った。そこは人を殺す為につくられたんじゃないかと思うような山道だった。向こうは崖だというのに、ガードレールが存在しないのだ。ペーパードライバーのパッくんが運転したんだけど、これは死ぬかと思った。でもパッくんは、時速5キロくらいのスピードで安全運転したので、崖から落ちることはなかった。そのかわり、後ろには殺人的な渋滞が発生していた。

 温泉につく。服を脱いで、皮がむけていることを確認する。ちんこをタオルで隠して、浴場に入る。からだを綺麗にして湯につかる。そして女湯のことを想像する。梨華ちゃんが裸の体をお湯に埋めているところを想像する。そうしたら僕は勃起してきた。梨華ちゃんの、黒くて艶のある肌。むちむちのおしり。形のきれいなおっぱい。妖しく濡れそぼった髪の毛。そして陰毛。ちんこの先っぽをさわってみたら、ぬるぬるしていた。なかなか勃起がおさまらなかったので、しばらくの間お湯から出ることができなかった。僕は、いろんな人のちんこを観察した。いろんなちんこが、いろんなまんこに入っていくところを想像した。そしたらとても嫌な気持ちになった。ちんこが存在せず、まんこも存在しなかったら、この世界はどんなに素敵なものだろうと僕は思った。でも、現実には存在する・・・。

 僕はせっかく温泉に来たというのに、おそろしく憂鬱になった。僕はうつ病なのかもしれない。とても切ない。とても死にたい。とても不幸だ。でもこれがうつ病なら、まだ救いがあるような気がする。だって、病気なら、薬を飲むかどうかしたら治るんだろう。それならいい。だけどもしうつ病でないなら、どうだ。病気でないなら、治しようがないじゃないか。そしてたぶん僕はうつ病ではない。だって性欲があるし夜もぐっすり眠れる。外出もできる。つまり僕は、一生この不治の憂鬱を抱えて生きていかなきゃならないんだ。いや、待てよ。これを解決する手段はある。たったひとつだけある。そうだ、死ねばいいんだ。死ぬしかない。

 むじん君ことグレートサイヤマンは、しかし必殺技は繰り出さなかった。高速道路で何度かそのそぶりは見せたけど、けっきょく何も起こらなかった。出そうで出ないくしゃみみたいだった。僕は生きたまま馬場のレンタカー屋に戻ってきた。やっぱり他人まかせじゃ駄目だ。自分で殺らないと駄目だ。でも怖い。自分で自分を殺すのは。他人に殺される以上に。