双眼鏡で

 梨華ちゃんを眺める。だんだん僕は疲れてきた。つま先立ちしているのがきつい。正直つりそうだ。これ以上がんばったらやばそうだ。こむらがえりを起こしてぶったおれそうだ。さらに言えば立っているだけで辛い。座りたくてたまらない。でも僕は思った、モンテローザで鍛え抜かれた鋼鉄の足腰の持ち主であるこの僕でも立っているだけで死ぬほど辛いんだから、ステージ上で踊り狂っている梨華ちゃんはもうすでに死んでしまっていてもおかしくないくらい疲労しているはずだ。それでも梨華ちゃんは、死んでない。梨華ちゃんはものすごくがんばっている。忍耐している。死の谷底を背後に見ながら、一生けんめい戦っているじゃないか。それなのに僕はなんだ、すぐに弱音を吐いて、だらしがない。なんていう貧弱で根性なしの童貞野郎なんだろう。僕は梨華ちゃんと一緒に戦おう、と決意した。梨華ちゃんと一緒なら、僕はやれる。なんだってやれる。とりあえず今はつま先立ちに命をかけよう。僕は力を振りしぼってつま先立った。つらい。くるしい。死ぬのかもしれない。しかし僕はこの疲労感と戦って、勝たなければならない。