双眼鏡で

 梨華ちゃんをみる。僕は背が高いほうなんだけど、それでも梨華ちゃんが下に降りてくると見えづらかった。僕はそんなとき、つま先立ちをした。僕の後ろにはぬりかべしかいないので、人間には誰にも迷惑をかけない。だから僕は公演時間の半分くらいはつま先で立っていた。まわりの人が推しジャンプをしたときは、僕は推しつま先立ちをした。梨華ちゃんは僕のちょっとした変化にも気付いてくれて、僕に対して秘密の合図を送ってくれた。それがどんな合図だったかは、誰にも教えてあげない。だってこれは秘密の合図なんだもの。教えたら秘密じゃなくなってしまうじゃないか。