色々言うしI LOVE YOU

 りかりん! いま僕は梨華ちゃんのところに少しずつ近づいているよ。チリンチリン。自転車はこの辺に止めて、と。ああ梨華ちゃん、緊張してきちゃった。あんまり行きたくないな。不良ヲタにいじめられたらどうしよう。僕の中の、のび太的本能が、危険信号を発している。しかし僕は行くのだ、愛する人に会うために。アルシェ前の噴水広場のあたりに、ヲタっぽい人たちがいっぱいいるなあ。この人たちみんな梨華ちゃんのことが好きなのか。この人たちも梨華ちゃんとエッチしたいのかなあ。リカニーとかするのかなあ。梨華ちゃんのことを想って夜々枕を濡らしたりしているのかなあ。とりあえずベンチ的なものに座ろうっと。よっこらしょ。おやおや? そこらじゅうでヲタ挨拶が交わされているぞ。みんな仲いいんだな。あれ? もしかして僕以外みんなおまいつなんじゃね? 僕だけ非おまいつじゃね? やばい、切ない。でもいいんだ。僕はおまいつなんかと仲良くなりたくないよ。梨華ヲタの友達がいてもむかつくだけじゃねえか。嫉妬に次ぐ嫉妬でさ。でもやっぱり仲良くなりたい。梨華ちゃんに恋することの悲しみを夜通し語り合いたい。話してみたらみんな良い人なんじゃないかな。梨華ちゃんを好きな人に悪い人はいないよ、きっと。あんなに素敵な子を好きになるのは、素敵な人だけだと思うよ。まあ僕は例外的に悪人なんだけど。あ、僕の番号が呼ばれた! ……列になって歩くの恥ずかしいなあ。小学生の登下校みたいじゃないか。ふい〜、やっと5階についたぞ。CDショップの一部を白い布で囲ってあるなあ。あそこに入るのか。よし、端っこに行こう。良いな、このポジション。梨華ちゃんはたぶんDJのバカボン鬼塚のとなりに座るから、ここからならバッチリ見えるぞ。まだかなあ。まだ梨華ちゃん出てこないのかなあ。はうあ! な〜んだ、梨華ちゃんかと思ったらスタッフだった。むやみに出たり入ったりしないで欲しいよ。梨華ちゃんかと思ってドッキリしちゃうからさ。はうあ! だからさあ、やめてって。出たり入ったりしないで! ところでスタッフAよ、その帽子はいったい何なの? あなたは画家なの? なんで室内にいるのに帽子被ってるの? どんだけオシャレが好きなんだよ。ナルシストにも程があるよ。スタッフB、何だよその意味深なマフラー(ショール?)は。そんなに寒くないだろ。空調設備はあるはずだし、今はもう春だぜ。って梨華ちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 梨華ちゃん! 好きだよ! 好き好き好き好き好き好き! 大好き! こっち見て! りかりん……。なんてかわいいんだ……。かわいすぎる……。りかりん……。洋服がピンク色で春っぽいなあ。よく似合ってるよ梨華ちゃん。あ! 梨華ちゃんの座る位置が微妙! ほとんど見えない……。梨華ちゃんの頭頂部しか見えない。でも背伸びしたら顔が見えるな。でへへ。かわゆい。かわゆすぎるう。でへへ〜。りかり〜ん。好きだよ〜。ああああ! かわいいよお! なにそのかわいさ。死にたくなっちゃうよ。はあ。りかりん。はうあ! 足がつりそうだ! これ以上背伸びをし続けたらやばい! まあいいや、梨華ちゃんの頭頂部を見ていればいいや。梨華ちゃんの頭頂部も大好きだもの。かわいい頭頂部だなあ。キャラメル色の髪の毛がつやつやと光っているなあ。あの頭をなでなでしたい。「梨華ちゃん、いい子いい子」って。はあ。りかりん。好きだよ。いい匂いするんだろうなあ。梨華ちゃんの頭の匂いを胸いっぱいに吸い込みたいよ。いやがられるかなあ。でも匂いくらい嗅いだっていいじゃない。減るものじゃないんだから。はうあ! あの微妙な隙間から梨華ちゃんのお手手が見えるじゃん! かわいいなあ。ああ、梨華ちゃんの小さくてかわいいお手手。先日あのお手手と熱い握手を交わしたなんて、夢みたいだ。梨華ちゃん、まだあの感触、ありありと覚えているよ。やわらかくて優しくて温かくて……。はあ……。あのね、梨華ちゃんは覚えていないだろうけど、僕は一生忘れないからね! 僕みたいなキモおっさんと握手してくれてありがとう。好きな人と手をつなげて、僕は嬉しいんだ。ああ、僕は、僕は、梨華ちゃんが好きだ。あのお手手をさ、僕だけのものにしたいな。もしそれが不可能なら、僕はこの世に生きている意味なんかない。「お前なんかが梨華ちゃん結婚できるわけないだろ」ってみんな気軽に言うけど、僕にとってその言葉は、「お前は死ね」と同じことを意味するのだ。どうしてそれがわからないのか? 僕は何度もいっているじゃないか。僕には梨華ちゃんが全てだって。他の何にも生きる意味を見出せないって。何回も言ってんのにどうして理解してくれないの? 僕の言うことを全て冗談だと思っているの? ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!! 前の人の頭が動いたので、梨華ちゃんのお顔がちらっと見えたァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!! かわいすぎる……。りかりん……。なんて眩しい笑顔なんだ。ああ、その眩しさで、いっそ僕の目をつぶしてください。そうすれば梨華ちゃんの彼氏の顔を見なくてすむ。いっそ殺してください。そうすればありとある苦しみから解放される。あんなに可愛い子を好きになるなんてどうかしているよ。僕みたいな不細工が梨華ちゃんと付き合えるわけないじゃん、常識で考えて。夢を見るのもいいかげんにしろよ。常識に寄り添って生きていけよ。もうやめた方がいいんじゃないかな、こんなことは。梨華ちゃんのことはすっぱり諦めて、合コンとか積極的に参加すればいいじゃん。他の誰かを好きになれば、梨華ちゃんのことなんかすぐに忘れてしまうさ。もう僕はやめた! 梨華ちゃんのことはあきらめハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!! また顔が見えたあ! かわいい! 好きだよ! やっぱり諦められない! こんなに大好きだもの! 梨華ちゃん……。好き……。なになに? 梨華ちゃんは、笑顔の素敵な男性にとても惹かれるのか。そうなのか。梨華ちゃんは笑顔が好きなのか。まじかよ……。僕は何に自信がないって、笑顔に一番自信がないんだよ。すっごいキモくなっちゃうんだよなあ。よし、帰ったらの前で笑顔の練習をしよっと! 素敵な笑顔を手に入れて、梨華ちゃんを魅了するのだ。ああ、梨華ちゃんの手料理! 梨華ちゃんのきのこ料理を死ぬるほど食べたい。あー今日床屋に行かなきゃよかったなあ。切る前はビートルズヘアーだったのに。僕のきのこヘアーを見たら梨華ちゃんは僕に好感を抱いたかもしれないぞ。あー切らなきゃよかった。僕のきのこを料理してください! みたいな。あーやばい、今イヤラシイ想像をしてしまった。最低だ僕って。梨華ちゃんごめんね。ごめんね。おいバカボン! 「ポジティブであればオールOK」だとかいう薄っぺらい人生観を語るような奴にな、「だめんず」がどうとか言ってほしくないわけ。梨華ちゃんはいいの、まだ若いから。バカボンとかいうあのおやじは本当バカボンじゃねえかよ。あんな奴が大手を振って歩いていられるこの世界っていったい何なの? ああ、梨華ちゃん! もう帰っちゃうの? 帰らないで! さみしいよ。ずっとここにいてほしいよ。それで、いっしょに僕の家に帰ろう。でも無理だよねそんなの。わかってるよ。言ってみただけだよ。あ! 梨華ちゃん、いなくなっちゃった……。そして残ったのは、この糞まみれの世界。