メイド喫茶

 僕の好きなりこちゃんが出勤するという情報をキャッチし、都内某所のメイド喫茶に行くことにしました。最寄の駅で降り、夜の冷たい雨がそぼ降る中、ハワイのことや梨華ちゃんのことやりこちゃんのことを思いながら、てくてくと歩いていきました。景気付けにと発泡酒のロング缶をコンビニで買いました。女性店員のいるレジと男性店員のいるレジがあったけれど、恥ずかしかったので男性店員のレジで買いました。彼は若いのに礼儀正しく、日本もまだまだ捨てたもんじゃねえなと思いました。捨てたもんなのは僕だけです。全世界にたいしてごめんなさい。酒を飲みながら、Leaderさんのことを待ちました。待ち合わせ時間の25分くらい前に「早めにつきました。着いたら連絡してください」とのメールがありました。「僕もなぜか早めに着きました」とメールを返しました。そして僕ら二人は出会い、僕が発泡酒の残りを飲んでいると、 「うわ! お前、酒くせえぞ!」とLeaderさんが顔を歪ませて言いました。
 「そうですか? それはすみませんでした」と僕は言い、「りこちゃんに酒くさいと思われたらイヤだなあ。でもお酒がないと僕は何もしゃべれないしなあ」と思いました。
 「そういえば、昨日1人で行った時に聞いたんだけど、りこちゃんはふっち君の日記を読んだらしいよ」
 「え! マジですか! ……なんてことだ! まさかあの日記を読まれるだなんて! あの変態日記を……。あれだけは読まれちゃいけなかった。もう終わりだ、これまで清純派を装ってきたのに、これからは変態として扱われることになってしまう! ちょう死にたい……」
 「まあ落ち着きなさい。大丈夫だよ。りこちゃんは、君の日記を読んで最初はドン引きしたけどそのうち感動を覚えたらしいよ」
 「そうですか。そうならいいんですけど、その言葉を額面どおりに受け取るわけにはいかないんじゃないですか。客商売ですから、リップサービスという可能性も十分にありますよ」
 「じゃあ君はなにか? りこちゃんを信じていないのか?」
 「いや、そういうわけじゃないですけど……」
 酒を飲み干すと、自動販売機の脇のゴミ箱に空き缶を捨て、いよいよメイド喫茶に向けて歩き出しました。
 店の前まで来ると、「ふっち君、君が先に入れよ」
 「いや、Leaderさんが先にどうぞ」
 「いやいやふっち君が」
 Leaderさんが僕の背中をドンと押しました。
 「あ、押さないで!」
 「まあまあ! お先にどうぞ!」
 僕はまたドンと押されました。
 「ああっ!」
 カランコロン。
 「お帰りなさいませご主人様!」