じゅん君は都の西北の同窓。
今日はそのじゅん君が出演する演劇を見に行った。
阿佐ヶ谷に向かう電車の中で、男子高校生の二人組が、
「梨華ちゃんと……」
「美勇伝……」
とかいう話をしていた。
僕はそれに敏感に反応して、彼らの会話を耳をすまして聞いた。
美勇伝ってそんなに有名なんだなあ、とか思いながら。
梨華ちゃんは大人気だなあ、とか思いながら。
「数学は90点とったぜ」
「おまえは武勇伝とかあるわけなの?」
あれ? 武勇伝?
あ! すごい聞きまちがいしちゃった!
梨華ちゃんと……っていうのは、
「理科ちゃんと勉強したよ」的なことだったのか!
美勇伝……っていうのは、武勇伝のことだったのか!
……ああ、僕は病気かもしれない。
僕は全ての事柄を梨華ちゃんに結びつけずにはいられないらしい。
で、阿佐ヶ谷について、一緒に見に行く約束をしていたY子ちゃんに会った。
Y子ちゃんは、なんと、彼氏を連れてきていた。
僕は少なからず驚いた。彼氏がいたなんて知らなかったから。
とてもお似合いの二人だった。
ほんわかして、仲良くて、癒される感じ。
彼も、とてもいい人。
彼にあった瞬間に、僕はこの人とはすごく仲良くなれるだろうなって思った。
そして僕は、何故か、切ない気持ちになった。
別に、Y子ちゃんが好きだったというわけじゃないのに。
何故だろう。
僕は、多分、全ての人に愛されたいのだろうな。
世の中の全ての人に、
「あなたなしでは生きてゆけない」って言われたいんだろうな。
それから、劇が行われる会場に向かった。
キャパシティーは100人くらいか。
僕ら三人は3列目に席をとった。
劇は、すごく面白かった。最高に楽しかった。
二千円の価値は充分にあった。
ただ、2時間ずっと座っていたら、
猛烈にケツが痛くなった。シャレにならんくらいに。
これは正直、拷問に近いくらい痛かった。
劇は最高なんだけど、ケツが痛くて最後のほうは集中できなかった。
それだけがほんとに残念だった。
ケツをいかにいたわるかということは、すごく大事なことだと思った。
ケツがこんなに大事とは、今まで気付かなかった。
何か催し物をするときには、ケツを最大限いたわらねばならない。
荻野久作の嫁役の人は、石川道子さんという人だった。
すごく美しかった。
石川っていう名字だと、美しくなるのかな。
石川さん、好き……