ふっち君の日記。

石川梨華ちゃんにガチ恋しているおじさんの記録

新年会一次

 海峡にどかどかと乗り込み、新年会を開始する。リトルチンがよく通る声で「あけおめ!」と叫んでいた。モンテローザで新年を迎えたときの悪夢が不可避的に思い出され、涙が出そうになった。だけど僕はもう解放されたんだ。自由人なんだ。うたいびとはねなんだ。どこまでだって飛んでゆける。富士の樹海までひとっ飛びだぜ。そんなことを思って酒をがぶがぶ飲んでいたら、富士の樹海の権威であるmm-nakamurayaさんこと茶碗さんことあやヲタさんがあらわれた。やたらハイテンションだ。クスリでもやってるんだろうか。僕にも内緒で分けて欲しい。茶碗さんは内定先をぶっちぎって、落語家になろうかなあ、どうしようかなあってみんなに相談していた。ark君はそれを聞いて、リアリストの本領を発揮し、おとなしく就職するべきだと主張していた。一方僕は、論破ヲタのark君に論破されるのを恐れて何も言わなかったけど(言ったら間違いなく論破されていただろう)、ロマンチストの本領を発揮して、茶碗さんは自分の夢を追いかけるべきだと思っていた。茶碗さんの才能と個性をもってすれば、いずれは落語家として名をあげるだろう。日本落語の新しい道と光を世にしめすに違いない。そして機会があればサンボマスターとコラボレーションしてほしい。そしていつのまにか山口さんと入れ替わってほしい。たぶん誰も気付かない。

 酒宴もたけなわになり、卑猥な言葉が室内をかけめぐるようになると、いよいよ輪姦でもしようかという空気になった。少なくとも僕にはそう感じられた。なにしろ一人女性がいたし、これはやばいと思った。僕はスーパーフリーの二の舞だけは勘弁していただきたいものであったので、一人一人に心の中から自制を呼びかけた。輪姦はよくない。まるで動物じゃないか。動物以下だ。倫理・道徳といったものが。そうしたら僕の呼びかけが通じたのか、みんなちゃんとセルフコントロールし、事なきを得た。ついでに言えばセルフさんはいろんな意味でリトルチンをコントロールしていたようだ。お疲れ様です。

 1時間ほどたったころ、Daiくんが僕の隣に座って、いとおしくさえなるような打ちひしがれた声で僕に話しかけた。「セックスなんてしないほうがいいですよ。なにしろ幻滅することになりますからね。そんなに素敵なものじゃないですよ。ええ、たとえ相手が梨華ちゃんだとしてもです。幻想は幻想のままであるべきなんです。現実に触れてしまえば、幻想に裏切られることになります。幻想は消え去り、あとに残るのは灰色の現実だけです」というようなことを、Daiくんは言う。そういうものなのかなあ。でも僕は大丈夫だと思う。だって僕は梨華ちゃんに幻想なんて抱いていないんだから。梨華ちゃんはおならもすればうんこだってぶりぶりする。脇の臭いを頻繁に確かめるし、生理のときは不機嫌になる。陰口だって積極的にたたく。そしてセックスに憧れている。セックスってどういうものだろうって考えながら、ぎこちなくオナニーをする。僕はそういう現実を、しっかりと認識しているつもりだ。幻想なんてない。存在しない幻想は壊れようがない。だから僕は梨華ちゃんとセックスをする。なにも問題はない。
 僕はDaiくんに、かねてより抱いていた疑問を口にする。「モー神通信って、なんて読むの? モーしん? モーかみ?」「たぶんモーしんだと思いますよ」なるほど。すっきりした。

 それから僕は、いよいよ告白をせねばなるまいな、と思った。いままで梨華ちゃん梨華ちゃん言ってたけど、妥協して彼女を作ってしまったという事実を。僕は彼女との2ショット画像を携帯の待ちうけにしていた。妥協したと言っても、これはかなり自慢の彼女である。なにしろかわいい。梨華ちゃんに似てる。これだけそっくりなら、別に梨華ちゃんじゃなくてもいいやっていう気持ちになるくらい似てる。僕は、自分の信念を曲げて他の人を彼女にしていたことがつねづね後ろめたかった。もうこのへんで公表するべきかなと思った。そろそろ楽になりかった。僕は近くにいたみんなに携帯を開いて見せた。じつは彼女ができたんだと。梨華ちゃんそっくりでしょうと。だけどみんなはディナーショーでとった写真だと思ったようで、「梨華ちゃんかわいいですね」と言う。ちがうよ。梨華ちゃんじゃないよ。ただうりふたつなだけなんだよ。僕はこれから、この梨華ちゃんそっくりの子、リナちゃんていうんだけど、この子と幸せになるんだ。仏滅の日に挙式するんだ。なにしろすいてるらしいからね、仏滅は。ねえ梨華ちゃん、仏滅は嫌?