覇気のない雨

 夢も見ないくらい深くぐっすり眠った。目を覚まして窓から空を見上げたら陰鬱に曇っていた。地面をよく見たら水たまりができていて、その上に雨粒がやる気なさげに落ちていた。お前もっとやる気だせよ。お前にはさ、覇気というものが感じられないんだよ。そんなんじゃ、社会に出たらやっていけないぞ。すぐ首んなっちゃうぞ。

 僕はとりあえず朝の一服、と思って煙草を探したけどなかった。昨日の間にぜんぶ吸いきっちゃったんだ。ああ、めんどくさいなあ、買いに行くの。でもしょうがないから頑張って外に出た。雨がしとしとと今にも自殺しそうな感じで降っていた。死んじゃだめだよ。みんな悲しむから。ねえ死んだらだめ。ねえ生きて。僕は君のことが大好きなんだ。そうやって僕は雨を説得しながら煙草の自販機まで歩いた。100円玉を2枚、10円玉を8枚いれて、セブンスターのボタンを押す。しかし売り切れだった。セブンスターだけ売り切れ。やれやれ、ついてないな。別の自販機まで歩いて、もう一度同じことをする。こんどはちゃんと買えた。そして帰り道も僕は雨粒との話し合いを続けながら歩いた。雨は僕の話なんかほとんど聞いてないみたいで、ずっと死にたい、死にたい、生きててもしょうがないって言ってた。僕は死んで花実が咲くものか、とか、命あってのものだねとか、生きてればそのうちいいことあるよとか、いろんな表現を繰り出したわけだけど、そんなのはぜんぜん説得力をもたなかった。だけど他にどういえばいいのかわからない。ごめんね、雨君。実を言うと僕も君と同じなんだよ。死にたいんだ。なあ、いっそ一緒に死んでしまおうか?