フランツ・カフカ

 文学青年を気取るために、ソファーに寝っころがってフランツ・カフカの『審判』を読んでいたら、ママがやってきて、「あら、ふっち君、何を読んでいるの?」と言った。僕は、カフカとか審判とかどうせ知らないだろうなと思ったので何も言わなかった。するとママは背表紙を見て言った。
 「審判。あら、審判ね、審判ならわたし、今日やってきたのよ。なぎなたの審判を」
 その審判じゃないんだけどなあと思ったけど、めんどくさかったので放置した。ママは長々となぎなたの審判について語った。僕はなぎなたの審判なんかにはぜんぜん興味ないんだけど、カフカの審判を読みふけることによってそのことをそれとなく伝えたんだけど、ママはそんなのおかまいなしにずっと話し続けた。なぎなたの審判について。この状況はまさにフランツ・カフカ的だな、と僕は思った。